『鬼滅の刃』に蔓延する“飢え”。作品が本当に描きたかったテーマとは?

 

柱の意味するもの

「鬼殺隊」のトップ9人の剣士は「柱」と呼ばれています。「柱」には、組織を成り立たせ、支える最も重要は人を意味します。しかし、死者の霊を数えたり、神や仏、高貴の人を数えたりする助数詞でもあります。ここに「死者の霊=鬼」という構図を見ることもできます。

先に述べたように、鬼舞辻側、産屋敷側に立って戦うものたちは、それぞれに過去の辛さを引きずっています。つまり、鬼になるか鬼殺隊になるかは、偶然が導いた結果とも言えます。それは炭治郎の最後の姿に象徴されています。

表と裏の存在

「人を妬まぬ者は運がいいだけだ」という黒死牟のことばは、「鬼殺隊になった者は運がいいだけだ」と読み替えることもできそうです。

まさに表裏一体。物事には必ず表と裏があり、それが分かちがたく存在しているということかもしれません。シェークスピアの戯曲『マクベス』にも「穢いはきれい、きれいは穢い」という台詞に通ずるものがあります。

ことばの意味するものが、人の思いを左右します。また、人の思いがことばの意味するものを作り出しもします。「鬼」も僕たちの思いが表出したものの姿かもしれません。

産屋敷耀哉は鬼舞辻無惨に言います。

永遠は人の想いだ。
人の思いこそが永遠であり
不滅なんだよ
君は誰にも許されていない

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image by: sumito / Shutterstock.com

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未來交創株式会社代表取締役/文筆家 朝日新聞 元校閲センター長・用語幹事 早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了 十数年にわたり、漢字や日本語に関するコラム「漢字んな話」「漢話字典」「ことばのたまゆら」を始め、時代を映すことばエッセイ「あのとき」を朝日新聞に連載。2019年に未來交創を立ち上げ、ビジネスの在り方を文章・ことばから見る新たなコンサルティングを展開。大学のキャリアセミナー、企業・自治体の広報研修に多数出講、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも登場している。 《著書》 『マジ文章書けないんだけど』(21年4月現在9.4万部、大和書房)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(すばる舎/朝日文庫)、『漢字んな話』(三省堂)など多数。

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