世界的エンジニアが株主として提案。ソニーが撤退すべき分野、分社化すべきビジネス

 

エレキからの撤退と同時に進めるべきなのは、エンターテイメント・ビジネスとイメージング・ビジネスの分社化です。

エンターテイメント・ビジネスは、ゲーム・音楽・映画を合わせたビジネスで、音楽や映像のストリーミング・サービスにより大きく変わりつつあるメディア・ビジネスにおいて、世界で最強のコンテンツを持つ会社として勝負に出ます(その意味では、Walt Disneyが一番のライバルです)。

特に今後、映画とゲームの境が曖昧になり、メタバースやe-スポーツのビジネスが大きく成長するので、そこで所有するコンテンツの力を最大限に活用して、音楽・映画・ゲーム・メタバース・e-スポーツ市場の全てを全方位的に取りに行きます。Meta(旧Facebook)の野望など、コンテンツの力で吹き飛ばすことが十分に可能だと思います。

ゲームの開発環境と映画の制作技術も融合しつつあるので、今のうちにUnityかEpic Gamesのどちらかを買収し、汎用的な3D映像作成環境としての整備を進めるのも悪くないと思います。

ハリウッドでは、クロマキー(グリーンスクリーン)の代わりに巨大なスクリーンを後ろにおいて、リアルタイムで背景レンダリングをしながら撮影する技術が使われ始めていますが(参照:「The Virtual Production of The Mandalorian, Season One」、「The Virtual Production of The Mandalorian Season Two」)、そんな技術にこそ大きな投資をすべきだと思います(Walt Disneyは、Lucasfilmの買収により、Industrial Light & Magicの技術を入手しています)。

イメージング・ビジネスは、イメージセンサーのビジネスをコアに、ミラーレス一眼、HalkEye、AI、自動運転技術などを含む、「レンズから取り込んだ情報を処理・活用するデジタル・ビジョン・ビジネス」へと拡張して行きます。

そのためには、深層学習に必須な行列計算を高速にするニューロチップも必須なので、ベンチャー企業を買収するなりして、世界中の優秀な人材を集める必要があります。日本のプリファードネットワークあたりは、良い買収ターゲットだと思います。

イメージ・センサーやニューロ・チップなどのハードウェアだけでなく、センサーから取り込んだ情報を処理するソフトウェアにも多大な投資をする必要があります。特に物体の認識技術は、自動車だけでなく、ドローンやロボットにも必須の技術なので、そこをハードウェアからソフトウェアまでフルスタックで提供出来る会社になることは、とても重要と考えます。

どちらの会社も「サラリーマン経営者」には経営出来ないので、外からカリスマ性のある経営者を連れてくるなり、社内でビジョンを熱く語れる若者を抜擢するなどの荒療治が必要です。

分社化する一番の理由は、それぞれの会社のビジョン(=存在理由)を明確にすることにより、そのビジョンを熱く共有する人々を集め、意思決定のスピードを上げて、資本を集中することにあります。

エンターテイメント・ビジネスにとっては、「コンテンツ」こそが価値の源泉であり、ハードウェアや技術はコンテンツを消費者に届けたり、コンテンツを作るための道具でしかありません。ハードウェアで利益を上げなければならないエレクトロニクス・ビジネスを切り離す理由はまさにここにあります。

イメージング・ビジネスも同じで、会社としてのビジョンを「レンズから取り込んだ情報を処理・活用する」ことに絞り込むことにより、「やるべきこと」と「やるべきではないこと」が明確になります。

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