西側と交渉決裂。ロシア「核」使用もあるウクライナ侵攻シナリオ

 

ただ、ロシアにおける議論の動向を詳細に分析したマイケル・コフマンらの研究やディマ・アダムスキーの研究を見るに、いくら「デモンストレーション」であっても核兵器を実際に使用することはあまりにリスキーであるとロシア軍でも見られているようです。

したがって、現在のロシアの軍事思想においては「デモンストレーション」や「威嚇」によるエスカレーション抑止は排除されないものの、その前段階において訓練を装った核威圧も含まれるようになっていると見られるわけですが、これは現在の状況とどうにも不気味に符合しています。

つまり、ウクライナへの軍事介入の前、あるいは最中に戦略核部隊大演習を行なって、西側に対しては「手出しするなよ」というメッセージを発するのではないかということです。これはこれで非常に危険な振る舞いではあるにせよ、実際の限定核攻撃を行うのに比べれば遥かに低リスクで、しかも確実にロシアのメッセージを伝達できるとモスクワが踏む可能性は排除できないでしょう。

新年からどうもあまり明るい話になりませんでしたが、これが不吉な初夢に終わることを祈りたいと思います。また、冒頭で述べたとおり、2022年には北朝鮮とカザフスタンに関しても不穏な動きが見られるので、何事もなければ次回はこちらの話を取り上げたいと思います。

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千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了(政治学修士)。外務省国際情報統括官組織で専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所特別研究員などを務めたのち、現在は東京大学先端科学技術研究センター特任助教。

 

ロシアの軍事や安全保障についてのウォッチを続けてきました。ここでは私の専門分野を中心に、ロシアという一見わかりにくい国を読み解くヒントを提供していきたいと思っています。

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