西側と交渉決裂。ロシア「核」使用もあるウクライナ侵攻シナリオ

 

偽旗作戦

それがいつ、どのようにして始まるのかについては、昨年末にYahoo!ニュース個人に簡単なシナリオを示しました。
米露首脳会談でも止まらない ロシアによるウクライナ侵攻の危機(小泉悠) – 個人 – Yahoo!ニュース

主な想定シナリオは2つで、

  1. サイバー攻撃や騒擾を引き起こしてウクライナを混乱状態に陥れた上で、人道的介入とか平和維持作戦の名目でロシアが介入する
  2. 真正面からロシア軍が侵攻し、ウクライナ軍を打倒する

のいずれかでしょう(第2のシナリオについてはNEW BOOKSのコーナーで紹介したバラバノフのシナリオも参照されたい)。

この考えは現在も大きく変わっていませんが、その後、2つの興味深いニュースが出てきました。その第1は、ロシアがウクライナ東部で「偽旗作戦」を目論んでいるというものです。偽旗作戦というのは要するに自作自演で、自分で何かことを起こしておきながら標的国に責任をなすりつけ、自らの軍事力行使の口実とすることを言います。

そして、1月14日にCNNが米国政府高官の談話として報じたところによると、ロシアによって訓練された破壊工作員が爆発物を用いてウクライナ東部の親露派武装勢力にテロを仕掛けることを計画している兆候を米国の情報機関はキャッチしたとのことです。このような見方は米国防総省やウクライナ国防省からも提示されており、どうやらこれがロシアによる開戦の口実になるのではないかというのが現在の焦点となっていることが窺われます。
First on CNN: US intelligence indicates Russia preparing operation to justify invasion of Ukraine – CNNPolitics

ただ、この記事の中盤では「そういう情報は入ってきているが現在では(その見通しが)格下げされている」というジェイク・サリバン国家安全保障担当補佐官の談話も紹介されており、既に予期された方法でロシアが戦争を始めると考えるのは早計でしょう。

ロシアの軍事思想において常に強調されてきたのは、偽装(マスキロフカ)によって敵の情勢判断を誤らせ、奇襲を仕掛けることの重要性であって、こうした方法を弱体な敵に対して用いれば戦争の初期段階(IPW)で決着をつけることが可能であるとされているからです。したがって、CNNの報道が事実であれば、ロシア軍としては「やっちまったな」ということで何か別の方法を考えるかもしれません。

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