1億5千万で狂った人生。河井案里氏を自殺未遂に追い込んだ安倍晋三氏に良心はあるか?

 

ただし、不埒な個人の責任として片づけるには、あまりに重い問題をこの事件は抱えている。必ずしも好き好んで河井氏があの苛烈な参院選に立候補したのではない、と筆者は思う。当時の安倍首相の意向が強く働いていたと考えなければ、あの選挙戦はとうてい理解できない。

全ては、一人の人物に対する安倍元首相の憎悪からはじまったのではないかと、筆者は疑っている。

2012年初めから、安倍氏は党内保守グループ「創生日本」会長として、再チャレンジに向けての政治活動を強めていた。そのさなかの出来事だった。

自民党の溝手顕正参院幹事長は28日の記者会見で、消費税増税関連法案への賛成と引き換えに衆院選を迫る「話し合い解散」に言及した安倍晋三元首相に関し「もう過去の人だ。主導権を取ろうと発言したのだろうが、執行部の中にそういう話はない」と不快感を表明した。(日経新聞)

広島県選出の参院議員だった溝手氏は2011年10月から自民党の参院幹事長をつとめる実力者である。第一次安倍政権時、ぶざまな形で総理の座を投げ出した安倍晋三氏の復活はないとみたのであろう。溝手氏は冷徹に言い放ったが、この発言を知った安倍氏の胸には、「過去の人」という言葉が鋭く突き刺さったに違いない。

溝手氏には安倍批判の前歴があった。2007年夏の参院選。小沢民主党に惨敗した安倍首相について、こう語った。「首相本人の責任はある。(続投を)本人が言うのは勝手だが、決まっていない」。

友達を異常なほどに厚遇し、味方には驚くほど律儀。その半面、敵対者とみなした者にはしつこく攻撃的にふるまうのが安倍氏の特性だ。安倍氏の頭の中で溝手氏は敵対者に分類されていただろう。

2013年夏の参院選に5期目の当選を果たして参院議員会長に就任した溝手氏が、同年8月7日に放った次の発言は致命的だった。

「安倍総理のように、たいへん勢いのいい総理のもとですと、バカでもチョンでも(選挙に)通るという要素があることは否定できない」

(編註:今日の人権意識に照らして不適切と思われる表現がありますが、取り扱っているテーマや文脈から差別意図はないものと判断し原文を尊重しました)

党本部で開いた会合で飛び出した。当時、自民党筆頭副幹事長だった安倍最側近の萩生田光一氏が苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていたのが印象的だった。

この人物が参院自民党で幅を利かしていること自体が、安倍氏には許しがたかったのではないだろうか。溝手氏の改選期である2019年夏の参院選で、当時の安倍首相は河井氏の後見役でもある菅義偉官房長官とはかり、ついに、河井案里氏という刺客を送り込む決断をした。

2013年の同選挙区は、溝手氏が521,794票を獲得、2位当選の森本真治氏は194,358票で、圧倒的大差をつけた。そのままだと19年も溝手氏楽勝が予想された。溝手氏の票を2で割っても、26万票とれる。広島に二人立てるべきだ、というのが表向きの理由だった。溝手氏の派閥領袖である岸田文雄政調会長は泣く泣く了承したが、自民党広島県連は反発した。

出馬要請を受けた河井夫妻は、意気に感じると同時に、戸惑いをおぼえたであろう。全県下で得票を積み上げなければならない参院選。県連の協力なしに勝つ自信など持てない。

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