アベノマスク“決着”も茶番か。安倍と岸田の不仲説に「プロレス疑惑」

2022.02.07
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自民党総裁選立候補時から「聞く力」をアピールし、国民の意見に聞く耳を持たなかったアベスガ政権からの脱却を企図していたかのように見えた岸田首相ですが、その道は遠ざかるばかりのようです。元毎日新聞で政治部副部長などを務めたジャーナリストの尾中 香尚里さんは今回、岸田首相の「安倍離れ」がまったく進んでいないことを示す証拠を列挙。さらに巷間伝えられる安倍氏と岸田氏の不仲説について、「プロレスを演じているだけなのでは」との疑念を示すとともに、考えうるそのシナリオを記しています。

プロフィール:尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト。1965年、福岡県生まれ。1988年毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長、川崎支局長、オピニオングループ編集委員などを経て、2019年9月に退社。新著「安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ」(集英社新書)、共著に「枝野幸男の真価」(毎日新聞出版)。

「机叩き」で反論の岸田首相は、安倍晋三氏から脱却できるのか?

先代、先々代の首相に比べて穏やかで淡々としたイメージの岸田文雄首相。珍しく感情をあらわにした場面が、毎日新聞の記事(デジタル版)で紹介されていた。1月31日の衆院予算委員会。首相が17日の施政方針演説で開催をぶち上げた、核兵器廃絶に向けての「国際賢人会議」について、日本維新の会の空本誠喜氏が「核兵器廃絶をいつまでにするのか」と質問。これに対し岸田首相が「いつまでにと具体的に言えるほど核軍縮、不拡散の世界は甘くない」と「右手で机をたたきながら」反論した場面である。

実際の質疑は、記事の印象ほどエキサイトしたものでもなかった。広島を選挙区に持つ空本氏が、同じ広島選出の岸田首相に「具体的な行動が広島の声だ。(首相は)決意表明だけで終わっている。総理としての(核兵器廃絶に向けた)ゴールを示していただきたい」と思いをぶつけ、首相も冒頭「しっかり受け止めさせていただく」と質問を受け止めてから答弁した。確かに右手で机を叩く音をマイクが拾い、聞き取りづらい面はあったが、答弁の内容はともあれ、さほど眉を顰めるような質疑でもない。

だから、記事の締めくくりに筆者は驚いた。唐突に安倍晋三元首相が登場するのだ。岸田首相が1月25日の答弁でも「机を叩いて反論」したことを挙げ「私はああいうのは好き」と、首相の答弁を「評価した」という。

これは、安倍氏が会長を務める派閥の会合での発言だ。朝日新聞の報道によれば、安倍氏は「(岸田首相が)時にちょっと、机をたたき気味に反応された。私はああいうのが好きでございます。時には言いたいことをガチンと言ってということも、大切ではないのかなと思う」と述べたという。

質問者の問いをまともに受け止められず、逆ギレして相手にかみつく――。首相当時の安倍氏の国会での振る舞いを思い出し、胸が悪くなった。

言うまでもないが国会は、与野党が国民を代表して行う質問や追及に対し、政府が責任を持って答弁する場だ。質問する側と答える側の役割は明確であり、首相が質問者に「言いたいことをガチンと言う」なんてもってのほかだ。安倍氏がどうしても「野党にガチンと言いたい」なら、それが許される党首討論の開催にもっと積極的であれば良かったのに、安倍氏は野党党首に言い負かされるのを恐れたのか、党首討論には一貫して逃げ腰だった。

2度と国会で見たくない為政者の態度。安倍氏はあれを、岸田首相にも求めるというのか。そして岸田首相は、この安倍氏の小姑のような振る舞いを、これからも許すのだろうか。

「岸田首相は『安倍離れ』しているのか否か」は、2022年の政治を考える上で重要なポイントの一つだろう。さまざまな見方があるが、筆者は悲観的だ。

就任直後に政権選択をかけた衆院選を戦うことが義務づけられていた岸田首相は、就任前から「新しい資本主義」を掲げ、それまでの安倍・菅義偉政権における新自由主義的な政策を転換し、格差是正のための分配政策を強化する考えを強調。衆院選後も、高い保管料が問題化した「アベノマスク」の廃棄をあっさり決定するなど、一見「安倍政治からの脱却」を図っているようにも見えた。

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