「こんなに逆風が吹くとは」“アンチなスマホ”のバルミューダ寺尾玄社長が語った本音

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発売されるや酷評が相次ぎ、年明け早々には小さなトラブルで一時販売停止の措置を受け散々な船出の「BALMUDA Phone」。先週、メディアの取材に応じたバルミューダの寺尾玄社長は何を語ったのでしょうか。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが寺尾社長の言葉を紹介。「スマートフォンにもアンチが必要」との思いが出発点で、想像以上の逆風にも「作ったからこそ多くを学べた」と、開発を続ける意思を確認し、期待を示しています。

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「アンチなスマホ」から生まれたBALMUDA Phone──実際につくったからこそ学べた教訓を次に生かせるか

先週、バルミューダの寺尾玄社長がメディアの取材に応じた。BALMUDA Phoneの騒動に関しては「こんなに逆風が吹くとは思わなかった」と語るなど、かなり本音が聞けた感があった。

BALMUDA Phoneは「スマートフォンにもアンチが必要ではないか」というのが発端だという。寺尾社長はミュージシャン出身ということで「音楽もアンチで。ロックが主流になっていくとパンクが出てくる」というように、いかにアンチをつくるかが起点だったようだ。

最近のiPhoneが画一的になる中、寺尾社長は「スティーブ・ジョブズが生きていたら、アンチなiPhoneをつくっていたのではないか」とも語る。

会社経営的に見ると「家電の世界だけで勝負していくには厳しい」という。家電を世界に展開していくには、その国ごとで規制が異なる。日本の製品はそのまま世界に売ることができない。同じ電圧の台湾であっても、台湾向けの製品をつくろうと思うと、半年間、エンジニアを3名、投入しないといけないというほどだ。アメリカであれば商品に加えてブランドを構築していかないといけない。その価値をつくるには、相当なコストがかかるというのだ。

「バルミューダはこの先、どうするのか」を考え続けた結果、スマートフォンに行き着いたという。「資金的にもやってできないことはない」とアクセルを踏んでしまったようだ。

当初の本体デザインでは筐体が小さすぎたため、京セラが設計したら部品が本体からはみ出してしまっていたとか、丸みを帯びたデザインを実現するため、基盤が6層構造になったことでコストがあがったなど、今のスマートフォンメーカーには考えられないものづくりをしてきたのがよくわかった。

ただ、逆に今のスマートフォンメーカーは当たり前のようにできるだけ安く、効率的に設計する術を知りすぎているからこそ、画一的なデザインになってしまっているというのも事実だろう。

バルミューダのようにスマートフォンの素人が参入し、いきなりつくってみたからこそ、常識ではありえない構造のスマートフォンができたのだろうし、京セラも、自分たちの常識を改めて見直す機会があって良かったのではないか。

寺尾社長は「実際にBALMUDA Phoneをつくったからこそ、多くのことを学べた。ただ、タイムマシンに乗って企画当時に戻ったとしても同じことをしていたと思う」とも語っていた。今後ももちろんAndroid 12のアップデートや独自アプリの強化、新製品の開発も続けていくという。「打席に立ったからには立ち続ける」ようだ。

プロサッカー選手がプロ野球選手の剛速球を打とうと思ってもバットにすら当たらない。最初は空振りだったかも知れないが、家電のプロがスマートフォンのプロと互角に戦い、ヒットやホームランを打てるまで、バットを振り続けてもらいたいものだ。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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