今明かされる、日中戦争で日本軍が中国に負けた意外な理由とは?

 

では、当時中国の貨幣状況は、どうだったのでしょうか?

中国国内では、1935年11月に蒋介石による幣制改革によって政府系銀行が発行する銀行券(不換紙幣)である「法幣」が強い力を持っていました。法幣は、蒋介石の政府発行ですが中国の政府が信用を保証している。だから中国国内のほとんどの地域で通用します。
(同前)

蒋介石政府の発行する「法幣」は、信用を獲得していたのですね。

では、日本軍の「軍票」はどうだったのでしょうか?

つまり、日本の軍票は通用しない状態だったわけです。そうなると日本軍は物資の調達にも困ります。
(同前)

そして、田村先生は、この「お金問題」が日本軍が勝てなかった大きな理由だと見ておられます。

日本軍が蒋介石軍を破って「点」を確保しても、その点を面へと広げていかなければならないわけですが、占領統治を拡大していくためにはお金が必要になります。軍票は通用しないので、法幣が必要なのですが、日本軍には法幣の持ち合わせはない。戦線が奥地に広がれば広がっていくほど、法幣を持たない日本軍の窮状は深刻なものになっていき、泥沼状態になっていくわけです。
(53p)

なるほど~。正直、今まで考えたことがない視点でした。そして、「いわれてみれば、まさにその通り」なお話です。この『経済と安全保障』、ここまでは、歴史のお話でした。

しかし、本のほとんどは現代にかかわる話です。

・デジタル人民元てうまくいくの?
・中国の切り札「デジタル・シルクロード」とは?
・ドル体制の未来は?
・中国政府がアリババをいじめる理由
・日本の課題
・日本と経済安全保障

最近、「経済安全保障」「地経学」という言葉が流行っています。詳しく知りたい方は、この本をご一読ください。いろいろ意外な視点があって、面白いはずです。l

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年2月20日号より一部抜粋)

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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