プーチン方式を踏襲か?中国は「ウクライナ危機」のどさくさで尖閣を侵略する

 

今回のロシアのやり方が成功すれば、当然、中国も同じ手法で台湾を取ろうとしてくるはずです。つまり、台湾国内の親中派を焚き付けて世論分断を画策し、さらには親中派や中国人保護を理由として、台湾に兵を出すというやり方です。あるいは偽装した中国漁民を尖閣諸島に上陸させ、それを排除しようとする日本に対して、自国民保護を理由として尖閣を侵略する可能性もあります。中国と台湾双方の人的被害が大きい台湾侵攻よりも、むしろこちらのほうが先かもしれません。

そう考えれば、日本の大使館員の一時拘束は日本政府にとって看過できない問題であり、外務次官ではなく、首相が表に出て厳重に抗議すべき事案だとも思います。甘すぎる日本の対応は、中国をつけあがらせるだけであり、それは尖閣問題に直結します。

2月14日、G7各国は、ロシアがウクライナに侵攻した場合、直ちに経済・金融制裁を科すと発表しましたが、これに対して中国は反対を明言しました。これはもちろん予想されたことではありますが、中国はロシアの侵略行為を認めているわけです。

G7がロシアへの経済制裁を用意中国は反対を明言

とはいえ、ウクライナ東部2地区の独立について、中国がロシアの決定を支持するかどうかというと、問題はそれほど簡単ではありません。

2月22日、中国外交部の汪文斌報道官は定例記者会見で、ウクライナ東部2地域の独立について聞かれ、「ウクライナ問題には複雑な歴史経緯がある。中国政府のウクライナ問題への立場は従来どおりだ」「国連憲章に基づき、話し合いで平和的に紛争が解決するよう、各関係方面に呼びかけていく」と、曖昧な言い方でお茶を濁しました。

中国政府がウクライナ問題への対応に苦慮…ドネツク・ルガンスク独立が台湾問題へ及ぼす影響を懸念か

また、ニューヨーク・タイムズの記者が、「ロシアがウクライナを独立国家として認めないとしていることと、中国が台湾を中国の一部だと主張していることに類似点があるのでは」と質問したところ、「世界には一つの中国しかない。台湾は中国の一部だ」と答えたそうです。

これに対して、ブルームバーグの記者マシュー・ブルッカー氏はツイッターで、中国がウクライナ2地域の独立を承認すれば分裂主義を認めることになり、「親ロシア派の民族自決と独立は認めるのに、台湾の民族自決と独立を認めないのはなぜか?」ということに繋がりかねないため、「ウクライナ問題は中国にとって茨の道だ」と指摘しました。

このことは、中国時報でもブルッカー氏のツイッター画面を引用しながら、大きく報じられました。

心虛? 外媒提問烏克蘭、台灣做比較 中國戰狼尷尬跳針回應

このように考えると、ロシアのウクライナ侵攻は必ずしも中国の台湾問題にとってプラスだというわけでもありません。しかも、もしも台湾に侵攻して失敗すれば習近平政権は吹き飛びます。習近平は、北京冬季五輪・パラリンピックの「大成功」を強調し、秋の共産党大会での3選を確実にしようとしているため、いま台湾侵攻や尖閣奪取はリスクが高すぎます。

加えて、中国国内もまだ習近平の基盤は盤石ではありません。王毅外相は、かつて現体制への忠誠心を疑われ、近い関係者が公安当局に調べられたことがありました。政権内でも裏切りを常に警戒し、厳しく監視しています。

それでも習近平の暗殺未遂事件が繰り返し起こっているとされているのは、忠誠心を強制しているからで、これは皇帝制度の時代から続いている中国の宿命です。中国では万世一系は不可能なのです。

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