ホンマでっか池田教授が解説。ソ連崩壊からのウクライナ紛争前史

shutterstock_2128994120
 

ウクライナ侵攻から早半月。破壊された街の様子や市民の窮状が連日報道され、そもそもなぜこのような事態になってしまったのかと、疑問に感じている人も多いのではないでしょうか。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、CX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみの池田清彦教授が、「ウクライナ紛争前史」とも言えるソ連崩壊後にロシアと旧ソ連の国々で起きた紛争の原因を解説。プーチンだけでなく、ソ連崩壊を後悔している人々が確かにいること、周囲が親欧米へと変わっていく焦りがあることを伝えています。

「ホンマでっか!? TV」でおなじみの池田教授が社会を斬るメルマガ詳細・登録はコチラ

 

ウクライナ紛争の行方

ウクライナがひどいことになっている。原発の傍で戦闘をしているというのは正気の沙汰ではない。ロシアが攻撃をしたザポリージャ原子力発電所は欧州最大の原発で、チェルノブイリと同程度の事故を起こせば、被害は10倍以上と言われており、ウクライナのみならず、欧州を含む近隣諸国に被害が及ぶ恐れがある。

放射能で汚染された国を占領してもメリットどころかデメリットの方が大きいので、ロシアも手加減をしていると思われるが、原発を占拠して、いざとなったら自爆させると脅しをかけて、和平交渉を有利に進めようと考えているのかもしれない。危険な綱渡りである。

そもそもなぜロシアはウクライナに攻め込んだのか。プーチンの頭の中は覗けないので、プーチンが何を考えているのか本当の所は分からないが、おおよその推察をすることはできる。

アメリカと並ぶ超大国であったソ連が1991年に崩壊して、ソ連を構成していた15の共和国はそれぞれ独立したが、社会主義から資本主義へと体制の変化に順応できずに、貧困と経済的格差が広がった。独立したアルメニアとキルギスの2013年の意識調査では、ソ連崩壊が有益だったと答えた人は、前者で12%、後者で16%、反対に有害だったと答えた人は、前者で66%、後者で61%であったという。ロシアに対する2018年の調査では、ソ連崩壊を後悔していると答えた人は、66%にも及んだという。

国民の大半は大国だった昔を懐かしんでいるわけだ。ちなみに旧ソ連の領土は2240万平方キロ、ロシアの領土は1713万平方キロである。ソ連時代のGDPは経済制度が異なるため算定されていないが、生産力はアメリカに次ぐ規模であったと思われる。ソ連崩壊による混乱で、崩壊直後の1992年のロシアのGDPは世界34位と低迷していて、欧米に対抗する国力はなかった。

しかし、ロシアは軍事力だけは大国並みだったので、プーチンは常に自国の優位性を世界に向けて誇示したいとの誘惑に駆られているのだろうと思う。2021年のGDPは世界11位と多少回復してきたこともあって、エネルギー大国として、EUにエネルギーを供給している自国は、少なくともEUと対等であるべきとの、自負があったと思う。旧ソ連から独立したエストニア、ラトビア、リトアニアが2004年にEUとNATOに加盟し、さらに、ウクライナとジョージアがNATOに加盟する動きを見せたことに、プーチンは焦りを感じたに違いない。

「ホンマでっか!? TV」でおなじみの池田教授が社会を斬るメルマガ詳細・登録はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • ホンマでっか池田教授が解説。ソ連崩壊からのウクライナ紛争前史
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け