世界は若い。“高齢化大国”日本に求められる転換期、着地点が見えない「新しい資本主義」の問題点とは

 

一有識者メンバーの視点であり、政治的リアリティのHowでは実現できないことかもしれませんが、「新しい資本主義」は今の日本において極めて重要な取り組みであると思います。

なぜなら、人口動態から観測できるように、日本社会は前代未聞の規模とスピードの世代交代が始まっているという時代の大転換に立っているからです。

今までの昭和時代の資本主義の価値観の延長線上では、令和の豊かな、Beautiful Harmonyのある未来が描けないからです。「もはや昭和ではない」のです。

過去の成功体験、トラウマ、慣習から脱皮するから「新しい」のです。平成時代は、昭和時代の価値観の延長線上でもがきました。令和時代では、日本の新しい時代へと羽ばたくべきです。

ただ、現状では「新しい資本主義」が一般的に評価されているとは言えません。「分配」なのか。「成長」なのか。どちらなのだ。「新しい資本主義」を一言でWhatを表すことが求められるからです。

ただ、大事なWhatとは、成長「か」分配ではなく、成長「と」分配の「好循環」だと思います。これは、当時の明治末期・大正時代の経済社会の現状に危惧し、新しい時代を常に切り拓くことに努めた渋沢栄一の『論語「と」算盤』に通じます。

そして、経済社会における「好循環」が大事なWhyとは、民主主義で声を上げることができない未来世代に財政赤字を押し付けて、彼らから借りたお金を現在に分配して成長を期待する過剰な財政依存症の経済社会モデルに問題視することだと思います。現在の「分配」には、未来に「成長」を持続させる長期投資の側面が重要です。

「新しい資本主義」の評価が市場で低い理由は、総理の発言の一部「市場や競争任せにせず」が切り取られているからだと思います。市場や競争が否定されているというメッセージを受ければ、それは大きな政府を目指す統制政策、つまり、新しい資本主義とは社会主義に過ぎないと短絡的な連想を招きます。

ただ、文藝春秋2月号の総理の「新しい資本主義グランドデザイン」の寄稿に示してある文章をきちんと読むと、「市場の失敗がもたらす外部不経済を是正する仕組みを、成長戦略と分配戦略の両面から、資本主義の中に埋め込め、資本主義がもたらす便益を最大化すべく」と意思表明されています。資本主義の否定ではないことが明らかです。

では、Whyなぜ、外部不経済を是正する必要があるのでしょう。それは、環境や社会の課題という外部不経済の解決は、私たちの豊かな暮らしのための価値があることだからです。

この課題解決型の価値創造で、むしろ新しい市場や新しい競争を促すことこそが、「新しい資本主義」が目指すべきところです。

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