世界は若い。“高齢化大国”日本に求められる転換期、着地点が見えない「新しい資本主義」の問題点とは

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岸田首相が打ち出した「新しい資本主義」の実現。ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり、すっかり耳にしなくなった感がありますが、「どこに着地するのか見えない」と動きの鈍さを指摘する声もあります。有識者メンバーの一人でもある渋澤健さんは、Whatではなく、Whyの側面から見ることが大切だと説きます。果たして、どういうことなのでしょうか?

プロフィール:渋澤 健(しぶさわ・けん)
国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。日本の資本主義の父・渋沢栄一5代目子孫。

現代の日本社会が必要としているWhyの精神

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

日本人には、What(何をするのか)、そして、それをHow(どのようにするのか)という思考が顕著に現れる傾向があると思います。Howという問いの答えを持っていなければ声を上げるべきではないという考え方は、もちろん生真面目な日本人の、責任を重んじる良い特徴でもあります。

ただ、Howの答えが見いだせないと、そもそもWhat(何)を問いかけることも始めないという受け身スタンスに留まる傾向が、日本の現代社会で目立つます。

加えて日本人は、Why(なぜ)という問いの思考回路が細い感じがします。Whyという問いに、「会社に言われたから」「ずっとそうやってきたらから」「皆がそう言っているから」など短絡的にとらえる傾向がよく見られます。

子供の頃には「なぜ」「なぜ」と好奇心が旺盛だったのに、忙しい親から「そういうことだから静かにしなさい」と注意され、教育や受験の過程では「正しい答えを出す」、「正しくない答えは出さない」という手法を叩きこまれ、社会に出れば「青臭いことを言わないで、与えられた業務に徹底せよ」と叱られる。

本質のWhyを深掘りして判断することなく、形式のWhat、Howだけが整ってさえいれば良いという風潮が生活の常識になってしまっています。

「○○について、どうすれば良いんでしょうか」という質疑は講演等で一般的ですが、「なぜ、○○なんでしょう」という質問は少ないのが現状です。自分の守備範囲の中におけるWhatとHowの思考回路については発達する一方、Whyのシナプスが繋がらなくなっていることに気づかなくなっているのかもしれません。

それは、なぜでしょう。Whyとは、実はWhatとHowと比べると上層にある問いだと思います。動物でも、あれは獲物だ(What)、仕留める(How)という「問い」の答えを持っていると思います。

ただ、虎や狼が、あそこに鹿がいるのはWhy、そもそも自分がここに存在している理由はWhyという「問い」は全くありません。

AIもWhyというロガリズムが無く、莫大なデータ量のWhatと機械的な高スピード情報処理のHowでありましょう。実はWhyとは、人間力そのものであり、現代の日本社会が必要としているものかもしれません。

「人的資本」や「人への投資」に着眼している「新しい資本主義実現会議」が討議している内容について、改めてWhyの側面から考えてみましょう。

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