プーチンか、欧米か。終わらぬウクライナ紛争「真の悪者」の正体

 

その中でも最大のフォーカスは【台湾マター】です。

言い換えると、習近平国家主席の第3期目が承認されるとされる秋の共産党大会後に計画されているという見方が強い【台湾への武力侵攻】の可否、そしてPros and consをいろいろなアングルから分析しています。

ロシアはウクライナへの侵攻によって国際経済からの締め出しという制裁に直面することとなりましたが、台湾侵攻をうけて中国も同じ状況に直面することになると思われます。ただ、ロシア経済の約10倍の規模を誇り、国際経済との深く広いつながりをもつ中国に対して、欧米や日本がどれだけ制裁を徹底できるかは未知数です。

ただ中国にとっては、最近は伸び率が低下してきていますが、共産党支配への国民からの支持の引き換えに高い経済成長と所得の伸びを提供してきただけに、侵攻時の国際的な制裁に中国経済が耐えることが出来るか否かは大きな生命線となります。

侵攻を強行した場合、今回のウクライナもそうなのですが、台湾を手中にするには短く見積もっても数年はかかりますし、侵攻を受けて確実に反中感情が台湾で高まるため、台湾の併合という、習近平国家主席の宿願を現実にするのは困難でしょう。

とはいえ、台湾への圧力を弱めるようなことがあれば、それは共産党内から引きずり降ろされかねませんし、国民からの支持も得られず、習近平体制は終焉するかもしれません。

ゆえに進むも地獄、退くも地獄と言えるでしょう。

侵攻の実施の可否は、懸念と強気にさせる要素(ファクター)とのバランスによって変わります。

中国にとって、侵攻を思いとどまらせる懸念材料は、【今回のロシアのように、奇襲を仕掛けようとしても、各国のスパイ衛星によって瞬時にすべての行動が筒抜けになり、一気に世界に広がることで、国際的な批判の圧力がかかり、それが国内に波及するという情報戦を欧米に仕掛けられる恐れ】です。

欧米からの非難に対しては何とでも答えるでしょうし、それはこれまでに慣れているプロセスですが、国内世論に影響を与えられて(フェイクニュースを含む)共産党支配の足元を崩されることがあれば…。

そして確実に課せられる国際社会からの経済制裁がどのレベルになるのかが分からないという懸念です。

先述の通り、ロシア経済の規模に比べると約10倍の規模があり、各国の対中依存度の高さからも思い切った制裁を迅速に、そして結束して課すことは困難だと思われますが、中国経済への心理的な影響は絶大だと考えられます。ゆえに、中国政府はすでに有事の際の制裁に対する耐性を強化し始めていますし、軍事面でも装備の強化とアップデートに加えて、戦略および兵力の能力増強に勤しんで準備しています。

外交的には、中国の強い経済力に支えられた外交力の弱化と、ロシアと共に主導する国家資本主義体制陣営の構築に影響をきたします。

いかなる失敗もかつての100年の恥辱につながると説いている中国共産党からして、いかなる後退も許されず、ひたすら拡大あるのみという姿勢ですので、他地域他国を引率できる経済力の死守は大きな命題となります。

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