プーチンか、欧米か。終わらぬウクライナ紛争「真の悪者」の正体

 

それに影響を与えるかもしれないのが、2つ目の状況の変化である【欧米諸国による外交の活発化】です。

ブチャおよびその周辺での悲劇の後、欧米のリーダーたちが続々とキーウ入りし、ゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナとの連帯を示しています。

フォンデアライデンEU委員会委員長や英国のジョンソン首相、ポーランドとバルト三国の首脳のキーウ訪問などは、確かにイメージ戦略という観点ではインパクトがありますが、実際にはどうでしょうか?

「決して見せないが、リーダーがそこにいるということは、相当な護衛が同行しており、欧米の軍がキーウにもアクセスできることを示した」という見方は面白いと思いますが、それを「プーチン大統領に対して欧米のリーダーたちが結束していることを示した」という宣伝は違うのではないかと考えます。

プーチン大統領やロシア軍は、もう相当なレベルの挑発行為を行っていますが、ここで欧米のリーダーたちに手を出していいことはないはずですから、外交的なパフォーマンスに過ぎないと言えるかもしれません。

しかし、あまりこれ以上、プーチン大統領を煽らないほうがいいと考えるのは私だけでしょうか?

また、オーストリア首相のプーチン大統領訪問は、他の欧米のリーダーたちがしようとしない一歩踏み込んだ行為でしたが、この会談にかけたオーストリア側のアプローチには間違いがあったように思います。

中立国であるという立場をアピールし、ウクライナの中立化のイメージを重ねさせようとしたのであれば、彼はEUそして欧米諸国側の“代表”として訪問し、欧米サイドの見解や立場を堅持しつつ、「仲介・調停」を目的に掲げたのは、ロシアからすると信頼を寄せることが出来る土台を作れない要因となったと思います。とことん中立を貫いてほしかったというのが、調停官としての意見です。Nice try, but with a wrong approach and mindsetでしょうか(あ、これはフランスのマクロン大統領も同じです)。

今週起きた外交戦で面白いなと感じたのが、アメリカ・バイデン大統領によるインド・モディ首相へのアプローチです。

オンラインでの首脳会談では、対中包囲網の1つであるクワッドの意義を強調しつつ、中国への対抗力強化という名目で、インドへのアメリカ製武器の安価での供与が持ち出されました。

これまでインド政府は、今回のウクライナ問題に対する国際社会の対応について、戦争が起こったことへの批判はするものの、対ロ制裁からは距離を置き、ロシアとも関係を維持しています。

アメリカ政府および欧州各国から、何度も対ロ戦線に加わってほしいとの要請(圧力)を受けていましたが、インド政府関係者曰く「常に上から目線で、依頼なのか、命令なのかわかったものではない。安価な武器供与については、インドの国家安全保障の強化に寄与するので素直に感謝するが、誰かを締め出して、世界を二分化する企みに乗るわけにはいかない」とのことで、こちらも態度を大きく変えることはなく、インドにとって必要とされるクワッドでの協力強化という点のみをありがたくいただいたそうです。5月には日本でクワッドの会合があるそうですので、ここでどのような展開があるのかないのか、関心をもって眺めたいと思います(ところで、日本政府はどのような役割を果たすのでしょうね?)。

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