しかし、今回のロシアの行動は、中国に大きな戦略上のヒントも与えています。
それはずばり【核兵器を保持し、その使用も厭わない姿勢を示すことで、アメリカによる直接的な軍事介入を防ぐことが出来る】という見解です。
中国はロシアの保有数に比べると桁が2つほど少なくなりますが、今でも300発以上の核弾頭を保持し、その数は年々急ピッチで増加していることに加え、極超音速ミサイルもすでに配備済みで、ICBMも保持していることなどもあり、アメリカは中国との核戦争を恐れて、仮に中国が台湾に武力侵攻しても軍事介入に踏み切れないという、ロシアと同じロジックが成り立つと、習近平国家主席が認識している場合は、侵攻に踏み切る可能性が高くなるでしょう。
そのバランスは、ロシアによるウクライナ侵攻が、ロシアにとってどのような形で“終わる”かという結果次第で変わると思われます。
さてここまでいろいろな“現状の変化”について触れてきましたが、これらすべてに日本は間違いなく影響されます。
ロシアは日本が対ロ制裁の輪に加わり、欧米諸国との連携を明確にしたことに怒り、今週には日本海での軍事的な威嚇行為を実行していますし、津軽海峡をロシア艦隊に通過させたり、北方領土問題の協議の無期延期または終結を宣言したりと、じわじわと、でも確実に圧力を加えています。
そして台湾有事に先立って、中国が日本に釘を刺しに来るだろうと思われる尖閣諸島問題に際し、これまではロシアが中国を抑えてくれるとの説があったのですが、それも可能性として消えたと思われます。
そしてパーセンテージとしては欧州に比べてかなり低いと言われている対ロエネルギー依存の構図も、サハリン1と2への継続投資を宣言しているとはいえ、確実に変化を経験することになるでしょう。
そのようなポスト・ウクライナの情勢、特に日本が直面するいくつもの課題にどう対応するのかを、ちゃんと今、考えているのか不安です。
そして、もう1つ分かることは、その図式とパワーバランスの変化、そして利潤追求の構造に、現在の発展途上国は含まれていないことでしょう。
ASEAN諸国については、インドがとっているようなどっちつかずの独自のスタンスを取っているため、直接的な戦火が及ぶことがないウクライナ情勢そのものの副作用を軽減できるかもしれませんが、今後、米中対立の構造で同様のことが起きた場合には、確実に火の粉を被ることになります。非常にデリケートで難しいかじ取りが各国に要請されます。
今、ウクライナで起きていることは、確実に世界の現実を変え、人々に不安を植え付け、そして国際協調の時代の終焉を明確にするものだと思います。そのような新しい時代を、どう迷子にならずに生きていくのか。しっかりと自分自身で考えておかなくてはなりません。
いつすればいいか?
今です。
ここ数週間でまた大きな戦闘が予測されており、残念ながらそれに対して“国際社会”はそれを防ぐ手段をもっていません。
リーダーたちのエゴのぶつかり合いによって、罪なき人たちが犠牲になるこの戦争に抗議します。
「誰が悪いか?」
この答えは見えたでしょうか?
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