ウクライナ情勢の理解に不可欠。「アゾフ大隊」と紛争を煽った米国務次官の正体

 

「アゾフ大隊」

前号で取り上げたエマニュエル・トッドの文春論文で、彼がマリウポリが激戦地となる理由について「ネオナチの極右勢力『アゾフ大隊』の発祥地だからだ」とサラリと触れていることについては、先週の「日刊ゲンダイ」コラムで注意を喚起しておいた(本号FLASH欄参照)。

マリウポリが「アゾフ大隊」の発祥地であるだけでなく戦略拠点であって、そこを死守すべく恐らく外国人義勇兵を含む数千人規模の同大隊の部隊が潜伏してロシアの精鋭=特殊部隊と戦っていると考えられてきた。米欧を含めたプロの観察者は、この戦争の1つの重要な要素が「アゾフ大隊」の動向にあることを知っているので、その実体論的視点からマリウポリを見ているが、マスコミは相変わらず「ロシア軍が市民を殺した」一本槍である。

「アゾフ大隊」は、Wikipediaにもあるように、今は一応形の上ではウクライナ軍の翼下に組み込まれた「国家親衛隊」ということになっているが、元々はウクライナの大富豪イーホル・コロモイスキーが私費を投じて組織した民兵集団で、国内のみならず欧州各地の反ロシア派、白人極右、ユダヤ過激派、ネオナチなど雑多なならず者集団が義勇兵として流入し同床異夢をなした。最初の司令官は白人至上主義的な人種差別思想の持ち主アンドレイ・ビレツキーで、彼は今もこの部隊の一部に影響力を持っていると言われる。

そのように、国家親衛隊として軍制に組み入れられたと言っても、それと外部のならず者集団との見境がつかず、そういう一部の戦闘行動をマスコミが「市民の抵抗」などと報じるのでますます訳が分からなくなる。

ちなみに、コロモイスキーのコングロマリットの一角に8つのチャンネルを持つテレビ局があり、そこでコメディアンから俳優に転じたゼレンスキーがドラマ『人民の執事』で大統領役を演じて人気を博し、本当の大統領になるきっかけを掴んだ。コロモイスキーはウクライナのユダヤ人共同体の有力指導者の1人でもある。最近はスイスと米国を行き来していたが、州知事時代の不正蓄財を理由に21年4月に米国入国が禁止された。

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