もう一つの勘違いは「中国という国家の広さと人口から見た市場的規模」という意味で経済的な価値を感じているということでしょう。
特に日本企業は「政治と経済は別」という、完全に日本人的な感覚をもって接してしまい、そのうえで、完全に日本人の弱みに付け込まれて、そのまま利用されて捨てられるという例が、数十年続いているということになります。
ある意味で「日本人の仲間意識」というような感覚は、中国人からすれば、「格好の餌食」でしかないということになるのではないでしょうか。
中国は2014年の三中全会において「健全に共産党に管理された市場経済」という言葉を使って様々なことを行っておりますが、その中で市場経済を政治的に利用し、また管理するというようなことを行っているのであり、経済に政治が介入するということが前提になっています。
2012年に野田佳彦内閣が尖閣諸島を国有化した時に、中国は突然理由なくレアアースの禁輸に踏み切りました。
中国はそもそも世界経済がどのように回っているかをわからず、中国が原材料、日本で半製品化したものがヨーロッパなどで製品化され、それが中国に戻って販売されているということがわからず、結局自分で自分の足をたべているような状況になっていました。
そのような結果論ではなく、「日本の尖閣諸島国有化」という政治状況で、貿易を注視するということで経済の自由が守られないということから、この時に多くのヨーロッパやアメリカのブランドの工場の多くが中国からミャンマーやバングラディッシュに工場を移したのです。
しかし、なぜか日本だけはそのまま残っているというおかしな状況になっています。
それも、日本が直接の被害者であるにもかかわらず、日本はなぜか中国にリスクを感じない世界経済からすれば「ずれた」経営者が多くなってしまっているということになります。
単純に「勘違い」しているだけではなく、中国という国家の仕組みを全くわかっていない。
実際に改革開放経済をして、1990年代くらいまで、GDPが毎年10%上昇しながら、人件費は全く上がらなかったということになります。
要するに景気が良くなっていながらまったく人件費が上がらなかったということで、ここにも中国の政治が人民の給与にまで介入していたことが明らかになります。
しかし、日本人の経営者の多くは「人件費が安い」という数字だけで飛びついてしまい、そのままそのイメージで現在も存在するということになります。
もっと致命的なのは、2001年以降人件費が上がり、現在では日本よりも人件費が高い年もあるにもかかわらず、なぜか中国にこだわり続けている企業が少なくないのです。
経済効率性も政治的な問題もすべて関わっていながら、ほぼ宗教的妄信で中国神話を信じているような企業経営者がいることではないでしょうか。
ここまでくれば、何らかの弱みを握られているのか、あるいはハニートラップにかかったかと疑われても仕方がないのではないでしょうか。
また、そのような疑いをかけられるような状況を中国は作り出してきたことも事実なのです。
このように、まずは日本のリスクの第一は「中国という国の内情や、政治状況を正しく理解していない」ということになります。
(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2022年5月9日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)
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