「訴訟で脅す」が維新の“体質”か?名誉毀損で女性議員を訴えた橋下氏の言い分

 

橋下氏は記者会見に関して基本的にオープンではあった。「囲み取材」の映像がユーチューブにアップされ、今でも自由に見ることができるのは橋下氏の方針も寄与しているに違いない。

数多くの会見動画を改めて見てみると、橋下氏はしばしば逆質問という手法によって、記者の固定観念を粉砕しようとしていた。役所とメディアが馴れ合ってきた記者クラブ制度に風穴を開けるべく、あえて喧嘩をふっかけた橋下氏の奮闘には、ある意味、敬意を表すべきであろう。

だが、やり過ぎは、逆効果も生む。橋下氏を論破できるほど迫力のある記者がいなかったのは残念だが、記者クラブに橋下氏が期待するほどの知的レベルと肝っ玉を有するメンバーがそうそういるとも思えない。しょせん、大声で威圧されれば、道理さえ引っ込める普通の人々なのだ。大石議員がこういう会見風景を見て、「メディアが委縮した」と受け取ったのも、無理からぬところがある。

かつて大阪府庁の職員だった大石氏は、府知事に就任直後の朝礼で職員に檄を飛ばした橋下氏に対し、「ちょっと待ってください。どれだけサービス残業やっていると思っているんですか」と噛みついた。そのシーンは再三、テレビで放映されたので、記憶にある方も多いだろう。

昨年の衆院選でれいわ新選組から立候補、初当選を果たし政界にデビューしたが、橋下氏にすれば天敵のような存在に違いない。

それゆえ、橋下氏や維新に対する大石氏の意見はとりわけ手厳しいわけで、その分は割り引いて見ておくべきだろう。

たとえば、橋下氏が新聞社に「言うことを聞くんやったら、特別の取材をさせてやる」などと言っていたという大石発言。関係者から聞いたのかもしれないが、真偽を確認するのは難しい。

橋下氏は2月20日のTwitter投稿で「僕が自分に都合の良いメディアに利益供与し、不都合なメディアには不利益を与えていたというメディア人はいないと確信している」と否定しており、橋下氏側は今後の公判でこの点を突いてくるだろう。

だが、総じて言うなら、大石議員の発言はあくまで、橋下氏のメディア対応とその影響についての見方と評価を示したものと受け取れる。橋下氏はそれを誹謗中傷と感じ、訴えを起こしたのだろうが、少なくとも大石氏の見方が根も葉もないとまでは言えないのではないか。

最近、松井大阪市長がタレントの水道橋博士さんのTwitter投稿に激怒して訴えたこともあり、訴訟で脅すのは維新の体質そのもの、などという声が上がっている。うっかり批判もできないほど怖い存在と見られるのは、維新にとっても好ましいことではないだろう。

人の世に争いごとはつきものだが、昨今の世知辛さはひとしお身にしみる。「ソショウガアレバツマラナイカラヤメロトイヒ」(宮澤賢治)。そう諭してくれる大人も政界には見あたらない。

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image by: 大石あきこ - Home | Facebook

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