ロシアに侵攻され、一般市民が多く命を落としたり、住む家を追われたりしているウクライナの状況も目を覆いたくなるような惨状ですが、“ロシアに攻められた”という状況が“幸い”しているのか(言い方は悪いですが)、各国からの支援が続々と寄せられています。決して困っていないということはないのですが、ロシア軍が集中攻撃を受けて立てこもっているようなウクライナ東部の都市を除けば、食うに困る状況には陥っていません。多くの支援団体がすでにウクライナ入りして支援を行っていますし、周辺国に逃れた人たちも基本的には食べることはできているという報告を受けています。
しかし、直接的な戦争当事者でない遠く離れた地域の貧しき人たち、そして最も脆弱な境遇に置かれた人たちが、今、次々と世界から見捨てられ、日々飢えて命を失っていく。これもまた国際情勢の裏側の真実です。
ところで、ゼレンスキー大統領とその仲間たちが、支援を行う各国に向かって「もっと強い武器を送ってくれ」と要請し、「ロシアに勝つまでは」と言っているのですが、この“ロシアに勝つ”とはどのような状況を指すのでしょうか?
さすがにモスクワに攻め入ることはないでしょうし、ロシアの領内に一歩でも足を踏み入れ、NATOから供与された武器でも使った日には、プーチン大統領とその仲間たちの思うつぼです。
その時、もうすでに攻め込んでいるじゃないかという現実は記憶のかなたに押しやられ、「ロシアに攻めこんできたウクライナ」という状況が心理的にできれば、プーチン大統領とその仲間たちは、今まで以上のフリーハンドが与えられることに繋がります。それを、欧米諸国はよくわかっているようです。
そしてプーチン大統領も決してボケてはいません。ウクライナの食糧輸出を止めている張本人でありながら、その被害者たちに支援を行い、アフリカの国々をロシアサイドに引き寄せようとする、まさに戦後をにらんだ活動を始めています。
核兵器など使うこともなく、徐々に対ウクライナへの外交的な支援の壁をはがしていく…。何とも恐ろしい戦略に思えます。
国際社会にウクライナ疲れと飽きが目立ってくる中、最近、複数の国々からコンタクトを受けだしました。
「もしあなたが今の状況で調停努力を行うなら、どのような提案をするか」
こう尋ねられるのですが、このメルマガの1つ目のコーナー「無敵の交渉・コミュニケーション術」をお読みの皆さんなら私の答えは分かっていらっしゃるかと思います。
以上、国際情勢の裏側でした。
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