平安時代の官職の不思議。『権大納言』の“権”が意味するものとは?

"Hina dolls" in Japan
 

脱線ついでに記します。一昨年の大河ドラマ、『麒麟がくる』で三条西実枝(さんじょうにしさねき)が登場しました。

石橋蓮司さんが演じ、ドラマでは実澄(さねずみ)という役名でした。おそらく、実澄を名乗っていた時期もありましたので役名としたのでしょう。

実枝は優れた歌人で一子相伝の秘事、「古今伝授」の継承者でした。「古今伝授」とは、「古今和歌集」の解釈を中心に歌学および、それに関連する諸説を秘伝として弟子に伝えることです。

実枝は子息が幼かった為に弟子であった細川幽斎(藤孝)に伝授しました。幽斎は実枝の孫、実条(さねえだ)に伝えました。「古今伝授」は三條西家に戻ったのですね。

歌人、学者として優れた実枝でしたが政治家としても手腕を発揮しました。ドラマでは、朝廷をおびやかす信長の防波堤的な存在として描かれていました。朝廷を守ることを明智光秀に託して没します。

ところが、実際は実枝と信長の関係は決して悪くありませんでした。

それを示すのが実枝の大納言任官です。権ではない正式な大納言です。実枝の大納言任官は信長の推挙でした。信長の実枝への信頼と両者の親密さが窺えます。

権が炙り出した歴史の一コマですね。

この記事の著者・早見俊さんのメルマガ

初月¥0で読む

(メルマガ『歴史時代作家 早見俊の「地震が変えた日本史」』2022年6月24日号より一部抜粋。この続きはご登録の上、お楽しみください)

image by: Shutterstock.com

早見俊この著者の記事一覧

1961年岐阜県岐阜市に生まれる。法政大学経営学部卒。会社員の頃から小説を執筆、2007年より文筆業に専念し時代小説を中心に著作は二百冊を超える。歴史時代家集団、「操觚の会」に所属。「居眠り同心影御用」(二見時代小説文庫)「佃島用心棒日誌」(角川文庫)で第六回歴史時代作家クラブシリーズ賞受賞、「うつけ世に立つ 岐阜信長譜」(徳間書店)が第23回中山義秀文学賞の最終候補となる。現代物にも活動の幅を広げ、「覆面刑事貫太郎」(実業之日本社文庫)「労働Gメン草薙満」(徳間文庫)「D6犯罪予防捜査チーム」(光文社文庫)を上梓。ビジネス本も手がけ、「人生!逆転図鑑」(秀和システム)を2020年11月に刊行。 日本文藝家協会評議員、歴史時代作家集団 操弧の会 副長、三浦誠衛流居合道四段。 「このミステリーがすごい」(宝島社)に、ミステリー中毒の時代小説家と名乗って投票している。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 歴史時代作家 早見俊の「地震が変えた日本史」 』

【著者】 早見俊 【月額】 ¥440/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 金曜日 発行予定

print
いま読まれてます

  • 平安時代の官職の不思議。『権大納言』の“権”が意味するものとは?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け