プーチンと「一蓮托生」は御免だ。露に“優しくない”習近平の本音

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ウクライナ東部のルハンシク州を制圧し、隣接するドネツク州の掌握を目論むロシア軍に対し、警戒度のレベルをさらに引き上げたNATO。識者はここにまで至ってしまった世界情勢を、どのように見ているのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、NATOは既に対ロシア戦時体制に入っているのではないかとして、そう判断せざるを得ない理由を解説。さらにそのような状況下において、日本の防衛力の強化を訴える声については「賛成」としつつも、「5年間で防衛費を2倍にする」という自民党提言の乱暴さや、核兵器を巡る日本政府の姿勢に対して疑問を呈しています。

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ウクライナ戦況に飽きている場合じゃない。いま歴史的な大変化が起ころうとしている:「デモくらジオ」(7月1日)から

例えばテレビ朝日のモーニングショーみたいなね、ワイドショーの発展系と言うべきか、そのような番組、玉川徹氏が頑張っておられますけれど、ウクライナに関する情報が非常に少なくなってきていますね。先週、確か「ウクライナ疲れ」なんてことを言う人が出てきていると申しましたが。そんなことを言っているのはもしかしたらロシアのスパイではないかという人までいたりしますが、つまり「疲れ」だけでなく「飽き」が来ているというようなね。情報に対する飽きが来ているという側面があるのだろうと思います。もう、ウクライナの話は分かったよ、と考えてしまう人たちが一定数おられて、そのような人たちの視聴率も是非ほしいというふうに考えるテレビ局あるいはそのような番組は、ウクライナのニュースはやったとしても番組の終わりの方でちょろっと触れるくらいでいいよ、くらいに考えておられるのではないかと思います。

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私は、そんなことはないと思っています。相変わらず、そうですね、…2008年のクリミアの話から見た方が良いのかもしれませんが、ここ10年20年のなかでこんなに大きなニュースはないんじゃないかというくらいのことだと思うんですね。あるいはもっと長いスパンで見て、歴史的な大変化が起ころうとしている、そういう時期ではないかと。とくにこの1週間、そのような思いを強くしました。

なぜかと言いますと、実はもう色んなものが動き始めている感じがする。国際会議がいくつかあり、NATOの会合、G7があり、あるいはロシア側が仕掛けたBRICSの会合があったりしていると。様々首脳級の政治家がウクライナの問題を巡って動いている。イギリスのジョンソン首相などは、またキーウを訪問したようです。相変わらずミサイルを撃ち込まれたりしている場所でもあるわけで、まあ、もう、イギリスは特に熱心ですけれど、戦争の最中にある、くらいの認識を持っているのかもしれないですね。そんなふうに推測が出来るくらい、よく動いておられます。

これはちょっと前ですけれど、NATOのこの前の会合に関して言えば、12年ぶりでしたかね、NATOの重要な概念というか「戦略概念」といわれるものですね。これ、NATOの行動指針に関わる戦略概念で、これを12年ぶりに改訂し、ロシアについて「安全保障に関する最大で直接的な脅威」だというふうに位置づけた。なんの不思議もない、その通りだと思いますが。それから、中国に初めて言及したことが大きく報じられていますね。アメリカおよび日本の関心からすれば、中国の問題は大きいですし、これから先、世界経済のかなりの部分を占めていくことになるアジア、そこで権益を巡っての争いの中に首を突っ込んでおきたいと考えるヨーロッパのG7の国もたくさんある。ドイツが軍艦を派遣したりしているわけですよね。そういう形で動いていることがある。NATOは対ロシア戦時体制に入っているのではないかというくらいの状況で。

このことの是非については色々な議論があると思いますけれど、トルコが反対していたフィンランドとスウェーデンのNATO加盟に関して、エルドアン大統領が妥協したということがあって、NATOとの間で妥協して、クルド労働者等の扱いについてエルドアンさんは、これでよいということになった。これでフィンランドとスウェーデンはNATO加盟の方向に大きく踏み出した。もうフィンランドは1,300キロにわたる対ロ国境にフェンスを作ろうとしている。国境にフェンスというと、すぐにトランプさんのことを思い出しますけれど(笑)、もっと切実な。トランプさんはメキシコ軍が責めてくると言ったわけではないですが、ヨーロッパの現状はそっちなわけですね。国境のどこを破ってくるか分かりませんが、そのような心配を抱きつつ、NATOに加盟していくことになったわけですね。

しかもこれ、6月の初旬というか、9日10日でしたかね、ポーランドのバルト海沿岸部でドローンとミサイル防衛、戦闘機も出てきた大きな演習が行われています。これ、加盟国やパートナー国17カ国が参加して、主な国はポーランドとチェコ、スロバキア…それからイギリス、なんですね。航空機と、航空、防空、地対空ミサイルの訓練をやっている。で、これ、色んな国の軍隊が一緒に動くための訓練なんですね、どうやら。そういう体制に入っています。これ、訓練そのものは毎回やられていることなんでしょうが、今年は意味が少し違いますよね。超具体的な意味合いが出てきている。NATOの形でアメリカも入る、そこに日本も招待される。ヨーロッパの国の中ではフィンランド、スウェーデンもNATOに加盟していく。NATOが大きな塊であって、それ以外、ロシアあるいは中国を中心とした塊。この2極構造みたいな方向に急速に世界が2分されていく感じがありますよね。

でも、中国の本音って多分ちょっと違っていて、ロシアと一蓮托生は、本当はかなわないなと思っているのではないかと思いますが、とはいえ、アメリカと一緒にやることはできない中国からすれば、ロシアに対する批判は控え、しかし、現実にはロシアが要求したものを売らなかったり、とかですね。

結構、ロシアに優しくないですよね。オリンピックの時に香港の問題や台湾の問題を指摘されて、中国、特に香港ですね、そしてウイグルの問題、とにかく反民主主義的と攻撃され、アメリカを含む多くの国が「外交的ボイコット」という挙に出た、あの北京オリンピック。そこにやってきたのがプーチンさんでしたから、いわばその恩を返す範囲でロシアに協力的な姿勢を見せるということはあったのかもしれませんね。でも、それ以上、NATOが急速に結束を固めて、いつでも戦争が始められそうなところに突き進んでいるのと同様の意味で、中ロが接近しているかというと、そんなことは多分ないのではないかという感じがしています。どうなんでしょう。そのあたりの現状認識というのは、日本が外交的にこの問題で口を挟んでいく上で、すごく重要な要素になるのではないかと思うんですけれどもね。まあ、資源になると言ったらいいか…。

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