欧州で加速するウクライナ“忘れ”の現実。なぜ熱狂は一気に覚めたのか

 

この番組の後、この街および近郊に住むロシア人とウクライナ人の元同僚たちと共に、夕食を取りながらいろいろと話をしました。

幸い友人たちの間での口論もなく、ケンカにもならなかったので安心しましたが、どちらも【プーチン大統領とロシアがウクライナに侵攻した意図については理解しているが、決して正当化できないこと】【在外のロシア人たちは、自国が行っていることに対して恥じており、支持できないと考えていること。しかし、ロシア国内の同胞たちがプーチン大統領を支持している状況については、それはそれで理解できること】【ウクライナの18歳から65歳までの男性たちが、家族を避難させてからウクライナに戻り戦っていることが称賛され、英雄視されているが、実際には逃げることを望んだ人も多い中、ゼレンスキー政権が発令した法律によって、半強制的に呼び戻されたケースも多いこと】【プーチン大統領の思考回路が、帝政ロシアの思考回路になっていて、その勢力圏を取り戻し、彼独自の帝国を作るまで、または彼が亡くなるまでは、止まらないだろうということ】【仮にウクライナを堕とし、“取戻した”としても、ジョージアやモルドバに対しての意欲は変わらない。恩をあだで返したカザフスタンについては分からないが、東欧諸国にまではちょっかいはかけないと思われる。特にNATOの基地がある国については、なかなか手出しはしない】【中国の影響力は無視できないが、親近感は存在せず、信用していない。経済的な利益を与えてくれる限りは付き合うが、政治やその他のことに対して口出しされることは許さない】といった考えはシェアしているようで、とても勉強になりました。

ウクライナ人の友人たちからは「日本を含め、各国が示してくれるウクライナへの連帯は素直に嬉しい」「でも、この戦いが停止した後(注:終わった後とは言いませんでした)、各国はどこまでウクライナの復興に携わり続けてくれるかは心配。スイスで行われた復興会議は勇気づけられるものであると思うが、アフガニスタンに対する支援状況の推移を見ていると、正直心配である」「プーチン大統領とロシア軍の上層部は許せないが、ロシアの人々も今回の蛮行によって傷ついたことは忘れてはならない」と言っていたことはとても印象的で、同時に驚きました。

しかし、私が懸念を抱き、恐怖さえ覚えたのは、たまたま同じレストランで食事をしていたドイツ人のグループが大きな声で罵倒してきたことで、もしかしたら当該のウクライナ人やロシア人よりも“分断”されているのではないかと感じたことです。私に対しても暴言を吐いていたようですが、幸か不幸か、早口のドイツ語だったため、実際に何を言われているのか分かなかったので、圧倒されるだけで済みましたが、同じテーブルの友人たちの反応を見ていると、あまりよくない内容だったようです。

とはいえ、このような反応をするということは、まだ“ウクライナ忘れ”は進行していないのかもしれませんが。

今回のドイツ出張中に気づいたことは、こちらでもロシア側の情報は遮断されていることです。

プーチン大統領が行っていることに対して、動機について理解はしても、決して支持しませんが、最近、ドイツのショルツ首相やフランスのマクロン大統領が【そろそろ対話・交渉による停戦を】と呼びかけ、「プーチン大統領とも話す必要がある」と言っている割には、まだ一方通行の情報しか与えないのだなと、ちょっと不安も抱いています。

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