教育機関などの第三者委員会の問題
学校でのトラブルは、その校種によって様々であるが、大きくは、「学校」か「学校の設置者」が第三者委員会を設置する。
学校の設置者とは、公立校であれば管轄の教育委員会、私学であれば学校法人、高専であれば国立高専機構である。
しかし、いじめやアカデミックハラスメント、パワーハラスメントなどの問題では、保護者や被害者が学校や学校の設置者に相談しているケースが多く見受けられ、第三者委員会の機能としては、その学校、その学校の設置者に対応についての問題を調査することになって、結果、第三者委員会の設置者が調査対象ということもある。
一方で、第三者委員会の設置の窓口であった学校の設置者の幹部が人事異動で他の学校に移動することもある事をみれば、学校と学校の設置者に明確な組織差はなく、ほぼ同一の組織を構成する者であるとも言える。
第三者委員会においては企業の不祥事などではかなりの効果を発揮しているが、ここには、取締役、従業員の他、株主などもいて、ステークホルダー同士の力の均衡や利害関係の均衡など様々な要因があって、中立公平な委員会の実現が可能になると言われている。
しかし、上のように学校と学校の設置者は大きくは同一組織であると言え、調査対象が第三者委員会の設置者になることも多数の事例があることから、真に中立公平な調査が行われているかを、被害者やご遺族という個人がチェックしていかなければならないという機能的、根幹的な問題点があるのだ。
また、多くの第三者委員会の委員報酬は極めて低額であり、専門家である弁護士さんや大学教授はほぼボランティアに近い状態で大量の資料や長時間拘束がある仕事をする事になる。
当然に、専門家は空気を食べてカロリーにするとか、葉っぱを紙幣に変えるという妖術を使えるわけはなく、本業もあるために、日程調整が難しく、そればかりを受けることはできないのである。
つまり、それ専門でそれで飯を食っているいる状態にはならない割に、高い専門性が求められ、さらに報酬はあるとはいっても小僧の小遣い程度なわけだ。
こうした第三者委員会の問題は何度も取り上げている。実際、この問題は専門家界隈では周知の事実になっているが、改善案が出ても検討で立ち消えている。
どの地域でもどの校種や組織体でも、第三者委員会の問題起きているのだから、それこそ、こども家庭庁なり、文科省なりで、学校に関連する問題についての専門家のリストストックをしておき、各問題の解消のために委員会を派遣するなど具体的な策を、何よりも早く施行してもらいたいところだ。
最後に、野村さんは私に、「もしも陽向が生きていれば、7月11日で二十歳になって、親父と息子で一杯やりたかった。」と話してくれました。
父にとって、我が子が二十歳になったら、大人同士として一杯やりたいねというのは、きっとどの親も思うことだと思います。
読者の皆様にも、ほんの少しの時間だけでも、本件のご遺族の思いや陽向君のことを考えてもらえたらと思います。
編集後記
改めて、私は今現在、命の現場にいます。
月命日はなるべく故人を思い、祈るようにしていますが、月の3分の2がそういう時間があるようになっています。
誰かの苦しみやその真実を背負うということは、誰かがやらなければならない重責であるとは思いますが、ここまでたくさんの重責を自分が負うとは思ってもみませんでした。
あるカウンセラーが、自分のケアを何よりも先にやりなさいとアドバイスしてくれましたが、きっと彼にはあの時、私がどういう役割になっていくのか予想ができたのかもしれませんね。
色々が重なり、心が重たいですが、7月11日、野村陽向君の二十歳の誕生日には、早めに帰宅して、普段はほとんど飲まないお酒でも飲んでみようかと思います。
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