このような研究は主に長寿研究の分野で進められているのですが、健康社会学でも類似の研究が増えてきました。
具体的には、「食べ過ぎない」「運動をする」「社会的な参加をする」という古くから言われていることに加え、特に重要視されているのが、「私は健康です!」と即答できる主観的な健康です。
主観的健康度が高い人ほど「疾患の有無にかかわらず生存率が高い」ことや、「病気の予後や平均余命にも強く影響を与える」ことがわかっています。
私が関わった調査研究でも、主観的健康度の高い人は術後の経過が良く、リハビリの効果も出やすいことに加え、人生満足度や職業満足度が高いことが確認されました。
主観的健康の効果はそれだけではありません。なんと、心疾患やがんといったストレスとの関連の高い病気への、単独の予測因子にもなることが追跡研究でわかってきているのです。
それは「主観的健康」が、ストレス状態に強く影響を受けていることを意味しています。
そもそも主観的健康は、1946年にWHO(世界保健機関)が健康を以下のように定義したことから派生した指標です。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること。
精神的・社会的とは・・・
- 孤立や対立がない
- 居場所がある
- サポートが得られる
- 役割がある
こと。このような環境があることで、私たちは「健康だ」と知覚できる。他者との関わりがある、会話がある、尊厳をがある、などの心が温まる環境を作ることで、「私」の主観的健康は向上するのです。
では、「私」たちの社会は、精神的・社会的な健康を享受できる社会になっているでしょうか。
みなさまのご意見、お聞かせください。
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