夏休みでも気が抜けない。女子高生の精神を追い込んだ「SNSいじめ」の実態

 

また、メッセージを渡してしまった友人は、連絡が取れない状態になっていたが、事情を改めて質問をすると、まさかこんなことに使われるとは思わず、メッセージ自体のスクショを頼まれるままに、共通の友人のYに渡してしまったと話していた。

この友人自体も、自分のしたことでSさんとの信頼関係が崩壊し、Yに抗議をしても、それ自体が晒されることへの恐怖があり、葛藤して思い悩んでいた。

この友人の母親にも許可を取る関係で、話を聞いたが、一度、「消えてしまいたい」といって、大量の風邪薬を飲もうとしたと話していた。真相は定かではないが、毎日泣いていて、部屋に閉じこもり、精神的におかしくなっているとも話していた。

これは事実であろう。実際に会うと、顔が腫れあがって、泣いていたというのは確信できた。

また、全アカウントなど、スマホの中にあったアプリを消してしまっているとのことで、データが残っていないとのことであった。

詳しく聞けば、その友人はYに抗議をした際、脅されてアカウントを消すように指示され、これに応じてしまったということであった。

しかし、実際に会って、スマホを見たところ、アカウントを削除したわけではなく、一時停止にしたに過ぎなかった。そのため再度ログインして、元に戻すだけで、全てのデータは元に戻ったのである。

FacebookやTwitterでは猶予期間があるため、削除したとしても再度ログインすれば復活できる期間がある。一方、Instagramは猶予期間がない。削除するとすべて消えてしまう。

しかし、こうしたものは簡単に変更されてしまうため、翌月にはTwitterが消したら復活できなくなる設定になることもある。こうした情報は常にアップデートが必要なのだ。

ここで記録を取り、その友人の意向で、本件終了後速やかにアカウントを削除することにして、私は学校と話をした。

Sさん本人と保護者、私と学校側は生活指導主任と担任の話となり、短期間で不特定多数から攻撃を受ける誹謗中傷の状態の事態の深刻さと心のダメージの深刻さを説明すると、学校にできることとして、個別の指導に応じてくれることになった。

個別の指導とは、こうした加工メッセージについて介入したり、質問をしてきた生徒らを呼び出すなどして、こうした行為の中止と謝罪を指導していくというものであった。

指導はかなり有効であり、その日から謝罪の連絡や不穏な投稿の自主削除が次々にあった。

また、Yについては保護者同伴で学校から説明を受け、Sさんへの謝罪をするということで、この問題は終結することになった。

一見、Sさんは日常を取り戻しているかのように見えるが、心のダメージは深刻であり、表面上の解消に至っても、以前のような心の持ちようにはなれないと話してくれた。

それも当然だろう。謝罪を受けたところで、心が晴れやかになるということはない。

しかし、Sさん自身、サッサとけりをつけたい気持ちが勝っていたから、表面的な解消の道を選んだに過ぎないのだ。

この記事の著者・阿部泰尚さんのメルマガ

初月無料で読む

 

print
いま読まれてます

  • 夏休みでも気が抜けない。女子高生の精神を追い込んだ「SNSいじめ」の実態
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け