核による“人類の自殺”まで秒読み段階。暴走プーチンが握る世界の命運

 

しかし、もしロシアが核兵器を宣言にも関わらず、実際には使用できないことが分かったら、それは言い換えると【核兵器の存在が過去77年にわたって他国への恐怖の源となり、人類が自ら開発し保持する種の自殺兵器という現実を世界に突きつけ、そして「核兵器を持っている限り、他国から攻め込まれることはない」という幻想が、国際政治を支配してきた核抑止というコンセプト】が否定され、代わりに【核兵器は現実には使用できない兵器である】ことを世界に知らしめることにつながると考えます。

もし核兵器が実際には使用できない兵器であることが示され、その考えが核保有国を含む国際社会に広まるようになれば、一気に堰を切ったかのように、核兵器の持つ役割は削減・廃絶され、それは同時に核兵器を持つ理由を無欲化することになるため、核兵器を手放し、かつ廃棄するという国際的な取り組みが息を吹き返すきっかけになる可能性を秘めているように感じます。

もし、この若干強引な仮説が事実に変われば、その時こそ、核兵器禁止条約が本当の意味を持つようになり、核兵器なき世界の実現につながるのだと思います。

しかし、現在の状況はどうでしょうか?

中国は核戦力の拡大を急いでいますが、恐らく台湾に対しては使用することはないと確信しています。しかし、中国に対して攻撃を加える相手に対しての報復には用いられる可能性が、中国のミサイル技術の著しい発展に鑑みると、高まっているように思われます。

ロシアについても、プーチン大統領の発言とは反対に、ロシア軍による核兵器使用に対する制御はしっかりと効いていますが、もしロシアが今回のウクライナへの侵攻を機に、一気に追い詰められ、本当に国家安全保障上の危機を感じる状況になれば、これもまた報復オプションか、崩壊前の暴発という形で使われる可能性が否定できません。

プーチン大統領がマインドコントロール的に支配されていると言われる“大ロシア帝国復興の幻想”と、「ロシア人の考えは誰にも理解されない」という考えに基づいた防衛思想が極限にマッチしてしまうとき、本気でロシアをも巻き込む形での核使用に走る可能性は否定できないでしょう(その際には地球が破壊されます)。

そして、核兵器をめぐる方向性について、理解不能なのが北朝鮮の動向です。今のところ、核兵器の存在こそが北朝鮮(金王朝)の存続のカギという強い思いに支配されていますが、他国から過剰なまでの圧力がかけられ、存亡の危機を認識したら、いつ核兵器を、大多数を巻き込んだ自殺のための手段として用いるか分かりません。

かなり強引な議論になりますが、現在進行形のウクライナでの戦争をいち早く終結させないと、私たちはそう遠くないうちに、核戦力の応酬と核兵器による人類の種としての自殺という、決して開けてはならない扉を私たちは期せずして開けてしまうことになってしまうかもしれません。

そのためにもウクライナとロシアの間での落としどころを早く見つけ、着地させるための働きかけ・プロセスを始動させなくてはならないと考えます。

しかし、欧米からの最新兵器を用いて失地回復を行おうとして熱くなっているウクライナにも、決して負けることが出来ないと躍起になっているロシアにも、まだ話し合いのテーブルに就くための心理的な準備は出来ていないようです。

食糧危機、エネルギー危機、木材・金属調達の危機、世界の物流の危機、至る所での紛争ぼっ発の危機、そして核戦争を禁じる留め金が外れかねない危機…。

いろいろな危機が、ウクライナでの戦争の長期化と、それがもたらす様々な副反応の表出で、これまで以上により現実味を帯びてきているように見えます。

皆さんはどのように対応しますか?

以上、国際情勢の裏側でした。

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