異文化を超えた仙台育英。東北勢の甲子園優勝を「阻んでいたもの」とは

Illumination tower of the baseball stadium
 

甲子園に話を戻すと、この違いを乗り越えようと宮城県で言えば、突出したヒーローがチームの中心となって奮闘してきた歴史がある。

1985年、桑田真澄さん、清原和博さんのKKコンビがいたPL学園が活躍するこの時期、同学年だった東北高校の佐々木主浩さんはベスト8で力尽きた。

1989年の仙台育英は大越基さんを擁し、優勝候補の大阪、上宮を破るなどで決勝に進んだが、決勝戦は帝京を相手に延長で涙をのんだ。

2003年、04年は東北高校のダルビッシュ有さん、2006年、07年は150キロ台の速球が注目された仙台育英の佐藤由規さんが活躍したが、どこかでチーム全体が力尽きてしまうのは、独特の甲子園の暑さもあるのだろう。

西宮市に住んだ経験から、この土地の暑さは東北で暮らしている者からすれば異次元だ。

知らずのうちにアスリートの体力を奪っていく。

東北の気候に慣れ親しんだ者には未知の領域で鍛えることは難しい。

だから、今年の仙台育英の勝ち方は非常に合理的である。

今回の仙台育英の優勝は、選手らがこれまでの文化的差異による結果の違いを乗り越え、自分らのやり方で確かな結果を導いたことが大きい。

「気持ちで打った」などとの言葉がテレビの実況で飛び交い、未だに精神論が語られがちな高校野球であるが、結果を出すには合理的なトレーニングも必要であり、同時にその合理を統一見解としてチーム力とするには、チーム内のコミュニケーションの質も求められる。

仙台育英での手法等の詳細はまだ不明であるが、どこかで学べる機会を得たいと思う。

大阪のマウンド上でただおびえていた私が、その後関西に暮らし、その違いを多様さとして楽しめたように、交わることで生まれる何かを楽しめれば、すべては学びになる。

仙台育英が優勝したことは、異文化の差異を乗り越え、1つのやり方を提示し、また新しい発見と可能性を示しており、その意味でもこの優勝は価値が高い。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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