心理的要素の反映
もう一つ、「とか」の例を見てみましょう。
誕生日のお祝いに、花とか贈っておいてください。
こうすると、「取りあえず」といった感じが強くなりますね。並列表現のなかでも「とか」は、やや距離を置いた心理要素が強く反映しているようです。
改めて、「と」「とか」「や」の意味と用法を整理してみます。
「と」の意味と役割
並列の表現に使われる助詞の「と」は、同等な立場の関係です。そして、列挙された事例は、いま取り上げる事柄の全てで、一つのまとまりとなっていることがわかります。
ビールとコップとつまみを持ってきて。
とあれば、その三つをそろえて行くことで、どれを欠いても意味がありません。また、
月とすっぽん
見ると聞くとは大違い
のように、二つのことばを「と」でつなぐと対比の関係も表されます。
「とか」のの意味と役割
「と」で並べた事柄は、絶対のものです。ところが「とか」は、列挙された事柄は絶対ではなく断定の度合いが低いのです。
ビールとかコップとかつまみを持ってきて。
であれば、コップがジョッキでもいいでしょうし、つまみはご飯のおかずであってもかまいません。さすがにビールの代わりに日本酒を持っていったら、嫌みの一つでもいわれそうですが、なければしょうがないという感覚にもなります。かなり、裁量を委ねた形の表現になるのです。
そのため、心理的要素を含む表現にも利用されるのです。
「や」の意味と役割
物事をあれこれ並べて、その中のそれぞれを念頭に置いたうえで、その周辺にあるものを取り立てる意識が働きます。
ビールやコップやつまみを持ってきて。
というのは、このほかにも必要な皿や調味料なども含まれます。ビールとコップとつまみは、例示でしかないのです。
事例を並列していく表現に、助詞が大きく関わっていることが、日本語の大きな特徴だと言えます。心理的な機微を助詞で表すことがわかると、文章表現にも幅が生まれてきます。
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