無意識で使っているけど意外と難しい「とか」という日本語の正しい使い方

Hand writing some the word "Japanese" in Kana syllabary on a blackboard in a Japanese class. Some books and school materials.
 

心理的要素の反映

もう一つ、「とか」の例を見てみましょう。

誕生日のお祝いに、花とか贈っておいてください。

こうすると、「取りあえず」といった感じが強くなりますね。並列表現のなかでも「とか」は、やや距離を置いた心理要素が強く反映しているようです。

改めて、「と」「とか」「や」の意味と用法を整理してみます。

「と」の意味と役割

並列の表現に使われる助詞の「と」は、同等な立場の関係です。そして、列挙された事例は、いま取り上げる事柄の全てで、一つのまとまりとなっていることがわかります。

ビールとコップとつまみを持ってきて。

とあれば、その三つをそろえて行くことで、どれを欠いても意味がありません。また、

月とすっぽん
見ると聞くとは大違い

のように、二つのことばを「と」でつなぐと対比の関係も表されます。

「とか」のの意味と役割

「と」で並べた事柄は、絶対のものです。ところが「とか」は、列挙された事柄は絶対ではなく断定の度合いが低いのです。

ビールとかコップとかつまみを持ってきて。

であれば、コップがジョッキでもいいでしょうし、つまみはご飯のおかずであってもかまいません。さすがにビールの代わりに日本酒を持っていったら、嫌みの一つでもいわれそうですが、なければしょうがないという感覚にもなります。かなり、裁量を委ねた形の表現になるのです。

そのため、心理的要素を含む表現にも利用されるのです。

「や」の意味と役割

物事をあれこれ並べて、その中のそれぞれを念頭に置いたうえで、その周辺にあるものを取り立てる意識が働きます。

ビールやコップやつまみを持ってきて。

というのは、このほかにも必要な皿や調味料なども含まれます。ビールとコップとつまみは、例示でしかないのです。

事例を並列していく表現に、助詞が大きく関わっていることが、日本語の大きな特徴だと言えます。心理的な機微を助詞で表すことがわかると、文章表現にも幅が生まれてきます。

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未來交創株式会社代表取締役/文筆家 朝日新聞 元校閲センター長・用語幹事 早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了 十数年にわたり、漢字や日本語に関するコラム「漢字んな話」「漢話字典」「ことばのたまゆら」を始め、時代を映すことばエッセイ「あのとき」を朝日新聞に連載。2019年に未來交創を立ち上げ、ビジネスの在り方を文章・ことばから見る新たなコンサルティングを展開。大学のキャリアセミナー、企業・自治体の広報研修に多数出講、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも登場している。 《著書》 『マジ文章書けないんだけど』(21年4月現在9.4万部、大和書房)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(すばる舎/朝日文庫)、『漢字んな話』(三省堂)など多数。

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