柳井氏の考え方の変化
さて、「一勝九敗」から20年近く経ちました。その頃の売上約3,400億円から2兆1,300億円にまで成長しています。柳井氏の考えは、どのように変化しているでしょうか。それとも、変わっていないでしょうか。
ここに、2021年3月のハーバードビジネスレビューに載った柳井氏のインタビュー記事があります。その中の言葉をいくつか拾ってみましょう。
自分たちが信じることを成し遂げるためには、事業を通じて収益をあげ、社員を教育しながらチームとともに前進することで、組織として成長を続ける必要があります。そのためには計画と準備が不可欠です。毎日毎日、愚直に計画を見直し、入念な準備を行うことが、本来の仕事というものではないでしょうか。
『一勝九敗』と比較すると、「社員の教育」「チームとともに」ということばが加わっています。より人を重んじるようになっているのでしょうか。
「ビジョン」の話も出てきます。
経営者は、会社が将来どうありたいかということと、現実の事業をどう回していくかということ、どちらか一方ではなく両方を考えなければいけません。
「ビジョン」と「現実」を同時に考えることが必要だということです。経営者は、どちらかに偏ってしまいがちですからね。
そして、経営の本質について、こう言っています。
時代がどれだけ変わっても、経営の本質は変わりません。教科書に書かれている小手先の経営戦略をいくら身につけたところで、何かを得られることはない。
なかなか、厳しい言葉ですね。柳井氏は経営の教科書をしっかり学んでいるはずです。そのうえで、あえてこう言っています。経営者は、経営の本質を深く考え、実行して身につけよということでしょうか。
いかがでしょうか。20年経って、表現は少し違っていても、柳井氏の考えの本質は変わっていないことが分かります。結局は、なりたい会社の姿を明確にし、社員とともに実行していくということに尽きます。
経営者に必要なのは、その意志の強さです。そうでなければ、ここまで会社を引っ張ってくることはできません。そんなことを柳井氏の言葉から学ばせてもらいました。
■今日のツボ
・経営者とは、目標を持ち、計画を立て、成長させ収益をあげる人
・経営で最も重要なのは「ビジョン」を持つことである
・時代がどれだけ変わっても、経営の本質は変わらない
image by:Apisit pornpanyanukun / Shutterstock.com