画像生成AIと日本酒「獺祭」の共通点とは?素人社員が職人技に勝利、売上100億を達成できた訳

 

香港のちょっといいレストランの日本酒のやばさはこの写真を見ればわかります。この原稿を書いている時点で1HKD=17.9円です。ご査収ください。

しかし、獺祭は、良心的なレストランでは比較的リーズナブルな価格で出てきます。日本のスーパーで買えば1,500円しないと思うんですが、こっちのレストランだと、720mlの瓶でだいたい7,000円ぐらいです。7,000円ぐらいならまあ許せる範囲です。だから、僕はよく獺祭を香港で飲んでいたわけです。

そしたら、この獺祭というお酒は、めちゃくちゃ面白いバックグラウンドがあったわけです。

山口県にある旭酒造という弱小酒造メーカーを三代目の桜井博志さんが継ぐのですが、経営が上手く行けず、杜氏(とうじ)も辞めてしまいました。日本酒は、杜氏が職人芸でいろいろやっていたのです、博志さんたちは途方にくれていたのですが、この方が、日本酒作りに革命を起こしていきます。よく考えたら、杜氏なんかいらなくね?みたいに考え、残された素人の社員を集めて、いろいろ高校の理科の実験のようにデータを取りながら見様見真似で、日本酒を作り始めます。それで杜氏なしで、数年でかなりの高品質の日本酒を作れるようになってしまったわけです。

最初は、桜井博志さんという方は、どっかの大学で醸造学とか学んだり、なんか理系の勉強した人かと思ったんですが、そうでもなく、ふつうに高卒の方なんですけど、こういう科学的な仮説実験を繰り返すスピリットを持っていたわけですね。こういう科学的アプローチで、安定して高品質の日本酒を作れるようなりました。1990年に精米歩合50%の獺祭を完成させました。また、商売のセンスもあって、当事は、地酒を地元で売る、みたいなことがふつうだったらしいのですが、東京には山口県出身の人がたくさんいるのに、山口県の日本酒がそれほどない、ということでここを狙って東京に営業をかけます。中間業者の問屋とも揉めて、問屋をぶった切って、メーカーが直接販売するという中抜きも堂々とやりました。日本酒づくりも、社員たちがデータを蓄積させていき、どんどん品質を上げていきました。こうして2016年ごろには売上100億円の大手酒造メーカーにまでなっていたのです。

すでに旭酒造はこのように成功していたので、長男の一宏(かずひろ)さんは、中国地方トップの広島学院という中高一貫校に山口県から新幹線で通学するボンボンになっていました。一宏さんは、早稲田大学に合格し、在学中は留学とかして英語も堪能でした。この一宏さんが、ニューヨークを拠点にして、レストランに一軒一軒飛び込み営業して獺祭を広げていきます。また、パリでもさまざまな著名な料理家に売り込みます。こうしてクールなSakeのイメージを作っていったわけです。そして、安倍晋三氏が時の首相だったとき、安倍首相は同じ山口県出身ですから、プーチン大統領とかを山口県に招いて虎河豚とかごちそうするわけです。自分の山口県の日本酒である獺祭をことあるごとにプレゼントする。オバマ大統領にも獺祭をプレゼントしました。こうして一宏さんの地道な営業努力と安倍首相のプッシュで、海外マーケティングが大成功し、獺祭は国際的な名声を獲得していくのでした。

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