ウクライナを甘く見たツケ。戦争長期化で影響力“凋落”のプーチン

 

一方、ウ軍は南部ヘルソン州での攻撃では、3軸で行っている。1軸は、ヘルソン市の北キセリフカからでロ軍が撤退したので、ウ軍が奪還した。ウ軍は前進して、チョルノバイフカ付近、ヘルソン空港あたりまで来ているようであり、ヘルソン周辺の要塞群の先端辺りにいる。また、西端のオレクサンドリフカをウ軍は奪還した。徐々にヘルソン市に近づいている。そして、ヘルソン市庁舎への砲撃もウ軍は開始した。

ドニエプル川の橋やフェリーは相変わらず攻撃しているので、ポンツン・フェリーで細々と補給をしている状況ではある。このため、食料や飲料水が思うように確保できず、戦場を離脱する部隊もあるようだ。

2軸は、ヘルソン州中北部のロゾベの橋頭保からロ軍を攻撃する軸であり、ベジメンネを奪還後、T2207号線脇を南下しているが、ロ軍はクリヴィー・リフ貯水地の堤防を破壊して洪水をおこし、橋頭保の船橋を押し流そうとしたが、失敗している。

3軸は、ヘルソン州北東部では、ビソコピリア奪還し南下しているが状況が見えない。ノヴォヴォスクレセンスキ奪還もしている。

そして、ウ軍はサポリージャ攻撃で大軍を集結していると、ロ軍は見てメルトポリからクリミアに軍民政府やロ軍の一部も移動させている。

次の大攻勢は、ザポリージャ州とロ軍は見ているようだ。ここのパルチザン活動は盛んであり、多くのウ軍特殊部隊が潜入しているとロ軍はみているようだ。

しかし、ウクライナは米議会や米国防総省に長距離ミサイルシステムや戦車を要望しているが、米国はウ軍が要望する長射程のATACMSを供与する考えはないという。ロシアもATACMSの供与はレッドゾーンだと再三宣言している。ということで、当面は地道にザポリージャ州を奪還して、アゾフ海の海岸線をめざすしかない。

また、黒海艦隊の母港をクリミア半島のセヴァストポリからノボロシスクに変更した。ザポリージャ州を奪還されると、セヴァストポリへの砲撃も可能になり、艦隊の安全がキープできないからでしょうね。

他方、ロシアの集団安全保障条約(CSTO)加盟国アルメニアが、国境付近で、アゼルバイジャン軍に攻撃されて、停戦監視をしていたロ軍は撤退し、軍の派遣をロシアに要請したが、ロシアもカザフスタンも要請を拒否した。

しかも、上海協力機構で、アゼルバイジャンとアルメニアのトップともプーチンは首脳会談をしたが、有効な調停をしていない。アルメニアへの支援を行わないようである。しかし、トルコとロシアが協議して、停戦には持ち込んだようである。

もう1つ、中央アジアのタジキタンとキルギス間の国境紛争も起こり、キルギスの飛び地のバトケンでは、住民らが政府に武器を配るよう要求している。

キルギスはクルグズ人の国家であり、キルギス政府は、タジクとの停戦発効後も「激しい戦闘」が続いているという。キルギスは、バイラクタルTB2で、侵攻してきたタジク軍のT-72戦車を攻撃しているようだ。

しかし、ここでもロシアが調停に乗り出さない。ロシアの影響力は行使できない。このため、中央アジアでの紛争を止められるのは、中国しかいないことになる。

もう1つ、シリアに展開していたロ軍もすべて撤収したという。ロシアの海外での影響力はなくなっていく。

一方、ウクライナが勝ち始めたので、欧州に逃れた800万人中500万人のウクライナ難民がすでに帰国したようだ。ロ軍のミサイルが防空システムで打ち落ちされれば、ウクライナに戻る人は増えるでしょうね。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年9月19日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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