小林よしのり氏が論破。安倍銃撃を「テロ扱い」エセ保守論客の売国ビジネス

 

明治時代の日本には来島恒喜という偉大なテロリストがいて、わしは何度も漫画に描いている。

明治政府は不平等条約の改正を焦るあまり、「治外法権」の撤廃に際して、外国人の裁判の際には日本人の裁判官の他に、外国人の裁判官を任用するという案を採用しようとした。

これでは、実際の裁判ではそれまでよりも外国人に有利な判決が出るようになる可能性があり、「治外法権撤廃」は形式だけで、逆にその強化になりかねないというものだった。

しかし当時はまだ国会も開設されておらず、いくら反対世論を盛り上げても阻止は不可能な状態だった。

そんな中、来島恒喜は最も強硬に条約改正を推進しようとしていた外務大臣・大隈重信に爆弾を投擲して右足切断の重傷を負わせ、その場で自刃した。

これによって条約改正は中止となり、来島は永く国士として称えられたのである。

昭和35(1960)年、日本社会党委員長・浅沼稲次郎を暗殺したテロリスト、山口二矢はこう書かれた斬姦状を遺し、自決した。

汝、浅沼稲次郎は日本赤化をはかっている。自分は、汝個人に恨みはないが、社会党の指導的立場にいる者としての責任と、訪中に際しての暴言と、国会乱入の直接のせん動者としての責任からして、汝を許しておくことはできない。ここに於て我、汝に対し天誅を下す。 皇紀二千六百二十年十月十二日 山口二矢。

「訪中に際しての暴言」とは、その前年に訪中した浅沼が中華人民共和国の「一つの中国」論に賛同し、「アメリカ帝国主義は日中両国人民の共同の敵」と発言したことを指す。

「国会乱入の直接のせん動者」は、60年安保改定反対等の請願デモで国会に浅沼らと陳情団が入った後、全学連を先頭とする2万人のデモ隊が国会構内に乱入したことを指している。

現在の感覚で見ては理解できないだろうが、日本が共産主義化される脅威が現実のものとして存在し、社会党がその尖兵としての役割を担っていた時代においては、その言い分は正当なものだったのである。

ものごとを時・処・位で考えられない硬直した優等生だけが、「テロは断固許さない」を思考のマニュアルにしてしまう。

むしろ、学校のお勉強に染まり切っていない庶民の方が、テロにもいろいろ背景があって、同情できるテロもあるという柔軟な思考ができるものだ。

もしも山上徹也が私憤ではなく、安倍と統一協会の関係を暴き、自民党を恐怖に陥れてやろうという目的の下、確信を持ってテロとして犯行に及んでいたら、これもまさしく同情できるテロであり、反日カルトに侵略を受けていた日本を救った国士だと評価できただろう。

そしてそんな時にも、東浩紀のような学校秀才バカは、「テロリストの主張に耳を傾けるな!それはテロリストの思う壺だ!」と叫んだであろう。それがただ統一協会を擁護する結果にしかならないということにも気づかずに。

前出の宮坂直史教授は「ここはテロという概念のやっかいな部分でもあるのですが、テロと一般犯罪との境界は、現実にはあいまいでもあります。たとえば要人が公然と襲われた場合には、実行者の動機や目的と関係なくテロとみなす傾向が、日本でも外国でもあります。法的に定義されるテロとは別の、人々が感覚レベルで共有するテロイメージです」と述べている。

確かにそういう傾向も否定できないが、あくまでも厳密なテロの定義に従うならば、山上の犯行はテロではなく、事件が契機となって政治と統一協会の関係が明るみに出て、統一協会追及へと世論が動いたのは、ものすごい偶然のなせる業だったと言うしかない。

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