30年以上も前から統一教会の問題に踏み込んでいた元参議院議員でジャーナリストの有田芳生氏は、改訂版が出版された著書の序章を新たに書き下ろし、統一教会がいかにして政治と関係を築いてきたか明らかにしています。なかでも、安倍晋三元首相の父である晋太郎氏を応援していたとの記述に注目したのは、評論家の佐高信さん。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』では、清和会が特に関係を持ちやすかったであろう理由を指摘。有田氏が、統一教会の信者が政治家の秘書になっていることを暴いていたことにも触れ、意識的に排除しようとしなければ、深い繋がりは断てないと断じています。
この記事の著者・佐高信さんのメルマガ
統一教会が、安倍晋三氏の父・安倍晋太郎を総理に望んでいた事実
9月14日、『ZAITEN』11月号に掲載の「佐高信の賛否両論」の対談のために有田芳生と会って改訂新版の『統一教会とは何か』(大月書店)をもらった。さすがにウォッチャーとしての年季の入っている本だが、書き加えた序章の「統一教会は安倍晋太郎議員を総理にすべく応援した」という指摘に目が止まった。
中曾根康弘の後継として、宮澤喜一、竹下登、そして安倍晋太郎が争っていた時、統一教会は晋太郎を応援していたというのである。結局、中曽根裁定で竹下になるわけだが、統一教会とのつながりは岸信介、女婿の安倍晋太郎、そして孫の晋三とそれぞれに深かったということだろう。
自民党の岸から福田赳夫を経て晋太郎にバトンタッチされる清和会という派閥がとりわけ統一教会と密着していた。本流とは言えなかったこの派閥が森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三という首相を生んで主流になっていくわけだが、森の前の派閥のトップの三塚博は幸福の科学が首相待望論をブチあげていた。
私に言わせれば清和会はキワモノ的政治家の集合体だったのである。陰をもつ彼らには統一教会は浸透しやすかった。
1991年9月19日号の『週刊文春』で有田は「統一教会“秘書軍団”は何をねらっているか」を報告している。その中の自民党衆議院議員の東力の秘書Cとのヤリトリが興味深い。
「統一教会員が国会議員の秘書になっているという話がありますが」と尋ねると、Cは「そんな話は聞いたことがないですね」と答え、「あなたは会員ではないですか?」という質問に突然激怒して、「あなたは何を言っているか分かっているのか。話が違うじゃないか」と過剰反応し、「会員でしょう」には、「全然違う。そんなことも分からないの。君、大学出ているの?」と見当違いの応答をする。
「では統一教会についてはどう思っていますか」と尋ねると、「新聞の記事をたまに目にしている程度でどうこう言える知識もなければ、立場にもない。とにかく統一教会の人間が秘書になっているなんて話、まったく聞かないですよ」と空とぼける。
しかし、有田は韓国の統一教会が作成した国際合同結婚式の名簿にC夫妻の名前と戸籍が旧姓を含めて載っていることを確認しているのである。それを見せると、Cは、「そんなもの関係ない。答える必要がない」と居直った。
有田は西川きよしの秘書が中央大学原理研究会の委員長だったことも明らかにしているが、操りやすいタレント議員がふえればふえるほど統一教会にとってはやりやすいということだろう。意識して排除しなければ自民党の議員は統一教会とのつながりは断てない。ある人が、自民党がカルト集団みたいなもんだからなと言ったのが忘れられない。
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