プーチン“核兵器使用”の最悪シナリオ。照準は「あの首都」か?

 

ところで、このreferendum(住民投票)がもつ真の意味は何なのでしょうか?

いくつかシナリオが考えられます。

一つ目は、4州の一方的な編入により、当該州は、仮に国際社会が認めなくても、ロシアにとっては“同胞の土地”であり、ロシアの領土という主張が出来ることで、今後、ここで行われる戦いはウクライナおよび外国政府からの“侵略への対抗”もしくは“過激派の駆逐”という大義名分をつけることが出来るようになると言われています。

それはつまり「ロシアの領土に今、ウクライナとその後ろ盾のNATOが攻め込んできている」というイメージの創出と、ロシア国民の危機感を高めることで、対ウクライナ戦争におけるロシア軍の士気を再度高め、今度は戦争の意義を【自国の防衛】に看板を掛け変えることに繋がります。

ただ今回の予備役招集に対するロシア国内の反応・抵抗を見てみると、その狙い・シナリオがかなえられるかは分かりません。

二つ目は、【編入された“ロシア領内”に住むウクライナ人を、ロシア人として徴兵し、同胞と戦わせるという地獄のようなシナリオのベースづくり】が考えられます。

これにより、ウクライナ側の戦意喪失を願うということを狙うのでしょうが、ロシアに寝返ったウクライナ人を粛正するトレンドがウクライナ国内で活発化する中、ロシア側に強制的にでも徴兵されてしまったウクライナ人に対して、ウクライナ側からシンパシーが生まれるかは疑問です(ここはゼレンスキー大統領の腕の見せ所です)。

あまり伝えられませんが、今回のロシアによる侵略後、ウクライナ国内で親ロシア派のパージは実際に行われており、密告によって逮捕・監禁されて殺害されるというケースも多く確認されているようです。

今回のロシアによる侵略を受けて、ウクライナ国内の士気は高まっており、母国愛が燃えることになっていますが、それにそぐわない人に対する反動は、戦時ならではの心理状態ゆえでしょうか、非常にキツイものになっています。

ウクライナ人を徴兵するかは微妙ですし、その場合は、いろいろな意味でロシアが末期状態にあることを示唆することになってしまいますが、どうなるのか、しばらく見ておく必要があるでしょう。

ただ、ゼレンスキー大統領がロシア軍に吸収された4州の“ウクライナ人”に対して寛容な姿勢を示し、「彼らもこの蛮行の犠牲者であり、ウクライナは彼らを守る・許す」といった内容を公言することが出来れば、国内外の世論(ロシア国内世論含む)の流れが大きく変わることもありえます。これはかなりデリケートなミッションですし、かなり危険を伴う賭けになりますが。

三つ目のシナリオは、【ロシアによる核兵器使用の大義名分を無理くり作り出す魂胆】でしょうか。

プーチン大統領は2月24日にウクライナに侵攻した時から何度も繰り返している【ロシアが核兵器使用に踏み切る条件】として【ロシア領内への攻撃、ロシアの国家安全保障が外国勢力によって脅かされ、その脅威に通常兵器で対応できないと判断する状況】を挙げていますが、今回、ウクライナからの反転攻勢を受けている“ロシアと接続している”4地域を編入することで、反転攻勢を阻止する狙いが見えます。

ロシア、そしてプーチン大統領にとっては国際社会がこの編入を認めるか否かはどうでもよく、ロシアが一方的にでもこの地域を“ロシアの国土”という定義をした瞬間から、今月に入ってウクライナ軍が行い、NATO軍が支持している反転攻勢はすべて“ロシアに対する侵略行為”という定義づけをすることができるようになります。

そしてそのイメージは、プーチン大統領とその周辺にロシア本土防衛のためには核兵器の使用も辞さないという方針の基盤が築かれることを意味します。

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