プーチン“核兵器使用”の最悪シナリオ。照準は「あの首都」か?

 

本当に核兵器を使用するか否か?

よくその問いが発せられ、ワイドショーなどでもいろいろな意見が交わされますが、私は実際の使用の可能性はまだ低いと考えています。

常に使える状況にあることは変わりませんし、今後、国内外からプーチン大統領にかかる圧力の度合いによっては分かりませんが、この「いつでも使える状態にあり、ロシアには自国防衛のために核兵器を使う権利がある」という姿勢は、かなり大きなプレッシャーをNATOおよび国際社会に与え、やっと盛り上がりだした対ウクライナ支援の勢いが萎む方向に進む力になるかもしれません。

実際に米国の戦争研究所(War Institute)も英国の王立アカデミーもその危険性を真剣に捉え、両国政府も核兵器使用の場合には大変な状況に陥るだろうとロシアに警告を発することはしても、非常に言葉遣いや対応には慎重な雰囲気を醸し出しています。

そして何よりも今週、ホワイトハウスおよび国務省からの命令という形で、駐ロシアアメリカ大使館が、ロシア国内にいるアメリカ人に対して即時退去を勧告したこと、そしてそれに英国が続いていることがとても気になります。

今回の予備役招集を受けた国内の混乱に巻き込まれないようにとの配慮に過ぎないとみる分析もありますが、実際には核兵器使用に関わる危機が高まったとの認識からの退避勧告ではないかとの分析も寄せられています。

ところで余談ですが、仮にロシアが核兵器を使用する場合、それはどこに対してでしょうか?

今回、編入した東南部4州でしょうか?それはないでしょう。

それでは、東南部4州の“向こう側”に対してでしょうか?これは少し可能性が高まってきますが、ロシア国内のみならず、欧州でも囁かれるのは、ザポリージャ原発などのウクライナ国内の原発への致命的な攻撃を“核攻撃”と位置付ける声も高まってきました。

街は破壊しないが、放射能汚染によって実質的に住めない土地にしてしまうと同時に、欧州に放射能被害が広がることを想定し、ロシアの軍事専門家の表現を借りると、「ロシアをコケにした欧州各国に対するチェックメイト」という可能性もあるかもしれません。

ザポリージャ原発に重火器を持ち込み、要塞化しているという情報が本当であれば、このチェックメイト分析は冗談では片づけられないかもしれません。

もちろん、可能性は低いとはいえ、戦況によってプーチン大統領は核兵器を使用するかもしれません。

アメリカも欧州各国も、非難し圧力はかけてきても、ロシアに対して核による報復攻撃をすることはないという見立てをし、あくまでも“ロシアを裏切った周辺国(バルト三国など)への攻撃”という位置づけからの使用・攻撃と位置付けた場合は可能性が高まります。

そしてここで注意したいのは、プーチン大統領の頭の中では、どうも国境の概念はなく、旧ソ連の勢力範囲はすべてロシアに属しているという示すことが多いことでしょう。

それはジョージア、スタン系の国々などへのNATO勢力の伸長もしくは駐留は“ロシアへの攻撃とみなす”というこじつけの可能性です。

この見解については、私は懐疑的ですが、ロシア政府内の血気盛んな方たちが最近このようなことを言い出したのは気にならざるを得ません。

そして最も恐れるシナリオは、“ロシアへの攻撃”認定をした際、プーチン大統領が核使用を行う場所・対象をキーウに設定するという内容です。

どの口が言うのか?という疑問はとても大きいのですが、「ロシアへの侵略は核使用を引き起こし、そして相手の心臓部を破壊する理由になる」という解釈がなされた場合、ロシアはウクライナの首都・キーウに核攻撃を加える可能性が否定できない気がします。

これは、今週に入って調停の準備にあたるグループに対し、多方面から「モスクワとキーウへの渡航は、通達があるまでは控えるように」とのお達しがきたことから考え出した嫌な可能性です。

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