ここまで描いたような混乱の兆しを嗅ぎ取ったのか、ロシアに対して寛容だった国々の態度にも変化が見られるようになってきました。
例えば、中国については、10月の共産党大会前に混乱を望まないという内政的な事情もありますが、ロシアが長引かせようとしている戦争に対して苦言を呈するようになってきましたし、明らかに距離を置くようになってきました。
問題は党大会後、習近平国家主席の第3期が決定した後、どのような動きを見せるかですが、それは早ければ11月には見えてくるでしょう。
そしてインドについては、明らかに距離を取る方針が鮮明になってきました。
国連総会でのインド外相の演説はさすがにうまいなあと感心しましたが、【インドはどちらの肩を持つわけではなく、常に平和の味方だ】と述べ、激しさを増す欧米からのアプローチに釘をさすだけでなく、ロシアに対しても【これ以上の蛮行はインドの支持を失うぞ】というメッセージを出していると考えられます。
そしてモディ首相が先日の上海協力機構会議の際にプーチン大統領に【今は戦争をしている場合ではない】と苦言を呈したらしいという情報は、インドがどこまでもロシアの行動をサポートするわけではないことを示したと考えられます。
同様にトルコや中南米諸国、アラブ諸国、アフリカ諸国など、これまでサイドを明らかにしてこなかった“第3極”の国々も、予備役の招集と住民投票の強行を受けて、ロシアとの距離を広げ始めています。
ここに核使用の可能性がより現実味を帯びるような事態になった場合、これらの国々はどのような対応を取るのでしょうか?
各国の反応と対応はまちまちでしょうが、ここで上手に振舞いそうなのがトルコです。
最近はロシアとウクライナの仲介をする形で、双方の捕虜交換を実現させ、一気にプレゼンスを高めましたが、これはロシアにもウクライナにも一定の影響力を発揮できることをアピールする機会になりました。
まさにトルコ外交の巧みさと国際情勢の中のパワーハウスへの復帰を印象付け始めています。
今も侵攻しているウクライナでの戦争がどちらに転んだとしても、利益を得るための素地を着々と拡げ固めている印象を持っています。
さて実際にはどのような世界が待っているのでしょうか?その答えが見え始めるのは、ロシアが実際に30日に4州を編入し、ウクライナ東南部を“ロシア”に変える今週末かもしれません。
その後にどのような反応が実際に国際社会や国内で示されるのか、そしてプーチン大統領がそれらの反応にどう対処するのか、によっては、私たちは本当にもう後戻りできない状況に置かれることになるのかもしれません。
唯一の明るい話題は、ロシア政府内で停戦協議を支持する勢力が増えてきたことぐらいでしょうか。
以上、国際情勢の裏側でした。
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