「専業主婦」という遺物
マミーギルトの問題が深刻化する背景には、日本社会に根強く残る性別役割分担意識の影響も。恵泉女学園大学学長の大日向雅美さんは、日経新聞の取材に対し、
「母親が子育てに専念しないと子どもに悪影響がある、とする50年前の考え方を引きずっている」(4)
と指摘。
専業主婦が”誕生”した大正時代の育児書は「子育ては母親が1人ですべき」と説いた。
さらに、1950年代以降の高度経済成長期、男性が仕事に専念し、女性に育児や介護を託す動きの中で、この考え方が一般家庭にも浸透、家事や育児が女性の”責務”となる。
大日向さんは、
「男女平等の教育を受け平等に仕事をしても、遺物を引きずったまま。この格差が苦しさの原因」(5)
と話す。しかし、現代はそもそも収入が増えにくいなか、子どもの教育など求める生活水準は逆に上昇。
「女性が出産後も正規雇用にとどまり共働きを続けないと、豊かな生活がしづらい」(大和総研の是枝俊悟主任研究員)(6)
という時代になる。だからこそ、「マミーギルト」という罪悪感を手放さなければならない時代がやってきた。ボーク重子さんも、母親に対し、
「まずは1日15分、自分の時間を作ること」(7)
ことからすすめる。
「家庭が大事」という、統一教会の呪縛を解き放て
そもそも、安倍晋三元首相の銃撃事件が起きた今こそ、日本において「家庭が大事」と主張し続けた勢力こそが、旧統一教会であったという現実を、私たちは直視しなければならない。
自民党が制定を目指した「家庭教育支援法案」は、伝統的な家族観を重視してきた安倍元首相らの肝いりの政策であり、さらに保守系団体や旧統一教会の関連団体が後押しをしてきた。
「今こそ家族を守れ」「『家庭教育支援条例・基本法』で絆を取り戻せ」(8)
教会の関連団体「国際勝共連合」の月刊誌「世界思想」の2018年2月号に、こう特集が組まれている。記事では、家庭について、
「人間の心に腹の底からの幸せ感を体験させることができるようにする『愛の学校』なのだ」(9)
とし、家庭教育支援の重要性を説く。
このような、長年の教会の”教え”が効いているのだろうか。日本は世界的に見ても少子化対策にかける資金が乏しい。要は子育て支援が、極端に”家庭任せ”となっている。
社会保障関係支出のうち、日本の子育て支援などに使われる「家族関係社会支出」の国内総生産(GDP)に対する割合は、OECD(経済開発協力機構)加盟国でのトップクラスの国からすると半分以下のレベルだ。
ソース:
(1)日本経済新聞朝刊、2022年2月21日
(2)日本経済新聞、2022年2月21日
(3)日本経済新聞、2022年2月21日
(4) 日本経済新聞、2022年2月21日
(5)日本経済新聞、2022年2月21日
(6)日本経済新聞、2022年2月21日
(7)日本経済新聞、2022年2月21日
(8)太田理英子「安倍元首相と旧統一教会系が共鳴した『家庭教育支援法案』の危うさ 地方でも推進し10県6市では条例化」東京新聞 2022年9月3日
(9)太田理英子、2022年9月3日
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