クリミア大橋爆破で勢いづくプーチン。米がウクライナに“テロ”を命じた訳

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10月8日の早朝に発生した、クリミア大橋の爆発事故。ウクライナによるテロとの見方が広がっていますが、その裏には複雑にして怪奇な思惑が渦巻いているようです。今回の無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』では著者で国際情勢解説者の田中宇(たなか さかい)さんが、海峡大橋の爆破をウクライナに指示したのは米諜報界と断定。その上で、彼らがこのテロを必要としていた理由を解説しています。

米国がウクライナにテロやらせてプーチンを強化

10月8日、クリミア大橋で爆破テロが起きた。クリミア半島とロシア本土をつなぐこの橋は、2014年に米国が政権転覆によってウクライナを傀儡化してロシア敵視国に転換し、対抗策としてロシアが、重要なセバストポリ軍港を擁するクリミアを自国に併合した後、2015-18年に建設した。クリミア半島はウクライナと陸続きだが、ロシアとは海を隔てており、ロシア併合後の流通の円滑化に橋の建設が必要だった。クリミアはもともとロシア領で、ロシア系住民が多いが、1950年代に権力者だったフルシチョフが策略の一つとしてウクライナに編入した。ソ連時代はロシアもウクライナもソ連国内だったため、クリミアがどの共和国に属しているかは大した問題でなかった。ソ連崩壊後、ロシアは、外国となったウクライナがクリミアを領有することを認めたが、その条件は、ウクライナがロシア敵視の国に変質しないことだった。

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ウクライナは、冷戦後の当初、ロシアとの関係がわりと良好で、セバストポリ軍港をロシアに貸与していた。だが、2014年の政権転覆でロシア敵視の米傀儡国になった後、ロシアへの軍港貸与をやめると発表した。ロシアは、クリミアをウクライナ領のままにしておく条件が失われたと判断し、ロシアへの編入を問う住民投票を経てロシアに併合した。その後、クリミア大橋が建設された。米傀儡のウクライナ政府はクリミアが自国領であると主張し続け、クリミアを武力で奪還する、クリミア大橋を破壊する、と言い続けてきた。今回の爆破直後、ゼレンスキー大統領の側近(Mikhail Podoliak)が「これは始まりにすぎない」と英語でツイートし、ウクライナ当局が橋を爆破したこと、今後もロシアに対して似たような攻撃を続けることを示唆した。

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これとは別に、米国の報道によると、匿名のウクライナ高官が、大橋の爆破がウクライナ当局によるものだと認めている。また、ウクライナ政府は爆破の数時間後、爆破を祝賀する記念切手の発行を発表している。発表のタイミングからみて、ウクライナ当局は大橋の爆破を計画・挙行し、記念切手の発行まで事前に決めていた可能性が高い。ロシア政府は10月10日、クリミア大橋の爆破はウクライナ(内務省)の秘密警察(諜報機関)によるテロ行為だと発表した。これらの状況からみて、大橋を爆破したのはウクライナ当局である。ロシア軍は10月10日、クリミア大橋へのテロ攻撃への報復として、ウクライナ国内20都市のインフラをミサイル攻撃して破壊した。

Senior Ukrainian Official Confirms Ukraine Orchestrated Truck Bomb Attack On Crimean Bridge; NYT Reports
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