動員兵の状況は悲惨な状態であるが、プーチンは、戦時体制を構築して、企業の戦争協力を進める調整会議を開いた。政権は、軍備の不足も認めて、総動員体制で戦争を遂行する方向になり、動員で労働者がいなくなった工場に学徒を使い始めた。太平洋戦争末期の日本を思い出す。ロシアも現状は負け戦であろう。
どう見ても、通常戦争では、勝つ見込みはない。
このため、100万人以上がロシアを脱出した。モスクワ市職員の1/3もいなくなったようである。知識人、スポーツ選手、IT技術者などの知能労働者や行政職員など幅が広い。総動員令が近々に出るとみて、退避しているようだ。
もう1つ、プーチンは、ウクライナが「汚い爆弾」を使うと盛んに宣言したが、これは、ロシアが核を使うための口実であろうということで、米国は核の利用は、何であれ許さないとした。
しかし、ロシアは10月26日プーチン指揮で、ロシア軍の陸海空の核戦力部隊が核搭載可能なミサイルを発射する演習を実施した。
それに対して、インドのシン国防相も「核を利用するべきではない」とロシアを強くけん制したことで、プーチンも「核を使わない」と述べることになった。
そして、ロシア正教のキリル総主教は、プーチンを首席エクソシストに任命したと声明。この声明は、「ウクライナがサタンの支配下にあり、キリスト教を放棄した。だから、悪魔払いのためにプーチンがウクライナと戦っている」として、宗教的な面で戦争を正当化しようとしている。
というように、この戦争を「非ナチス化」から「悪魔祓い」へと定義を変えてきた。
それと、2024年露大統領選があるが、そこまでに戦争が終わっている保証はなく、大統領選挙をしない可能性もあり、プーチンを排除するためには、クーデターか強制辞任が必要になるようだ。
その上に、今、強硬派のフリゴジン氏、スロビキン総司令官、カディロフ首長対実務派のショイグ国防相やFSBなどの政府官僚の対立もあり、プーチンは、ジレンマを抱える状態になっている。
一方、ロシア国民は、レバダセンターの調査によると、和平交渉開始を支持する国民が、9月48%から10月には57%にもなっているし、戦争支持は、9月44%から10月36%に減少している。このような世論になり、強硬派は、より強硬な意見で煽っている。
ウクライナの勝利4条件は、全領土の奪還、戦争犯罪人の引き渡し、賠償金、プーチンの辞任であり、和平交渉開始には、プーチン辞任が必要とウクライナは言う。
このため、プーチンは、内乱鎮圧の演習をモスクワで行い、クーデターへの備えを行った。
強硬派がクーデターを起こす可能性もあり、強硬派が政権を取ると核戦争になることが確実である。また、プーチンを支えているのは、FSBであり、プーチンを辞任に追い込む可能性もある。
和平交渉開始をロシア国内で、誰かが選択するか、もしくは、核戦争である。2択になってきた。
さあ、どうなりますか?
(『国際戦略コラム有料版』2022年10月31日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
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