人命軽視する“金の亡者”。葉梨「死刑ハンコ」大臣の笑えぬ自虐と無責任

 

千葉氏の行動は、法相が死刑執行に立ち会う前例をつくった。良き前例か悪しき前例かは、死刑制度に対する考え方の違いで解釈は異なるものの、以後、法相になった人は、前例、すなわち「立ち会い」を全く意識しないというわけには、いかなくなったはずだ。

しかし、その後、葉梨氏まで、のべ20人の法相のうち、10人が死刑執行を命じ50人が処刑されているが、千葉氏が示した前例を踏襲したケースはない。

批判的な意見もあったが、こういう法務大臣もいたほど、死刑の問題は重い。その重い大臣命令を、葉梨氏はテレビのニュースに取り上げられるかどうかという話に矮小化してしまったのである。法務大臣の資格があろうはずはなく、岸田首相はただちに更迭すべきであった。

岸田首相はこの発言の重大性をどこまで認識していたのだろうか。山際大志郎氏が統一教会との癒着で経済再生担当相を辞任したばかりであり、“辞任ドミノ”を防ぐために庇おうとしたのかもしれないが、国会の答弁で「職責の重さを自覚し説明責任を徹底的に果たしてもらわなければならない」と、続投させる方針を表明してしまった。

これは岸田首相にとって痛恨の失策だった。葉梨氏がこれまでに、あちこちで何回も「死刑のはんこ」ネタを使っていたことを認めており、とても人を納得させる説明はつかないため、更迭以外に事態収拾の策はなかったのだ。

厳しい批判がおさまらず、結局のところ岸田首相は、外交日程を遅らせてまで、交代人事に頭を絞らねばならなくなった。その結果、今月11日夕、葉梨氏は首相官邸を訪れて辞表を提出したが、遅きに失した感は否めない。更迭を否定しながら世論の批判が高まるとあっさり方針を変えてしまう岸田首相の危機対応には不安がつきまとう。

寺田稔総務相にも「政治とカネ」問題が次々と浮上してり、おそらく辞任は避けられまい。おまけに岸田首相は、昨今の物価高で庶民があえいでいるというのに、財務省の増税路線に乗ろうとしているフシがある。

内閣支持率の低下に怯えるだけで、やることなすこと後手ばかり。そのうえ増税されたら、たまったもんじゃない。さらに景気が悪くなるのは目に見えているではないか。山際氏といい葉梨氏といい、常識では考えられない不心得者を、よりによって大臣に任命するほどの眼力では、この激動期を乗り切れるとは思えない。

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