従来は年金受給者の年金水準を維持するために、現役世代の保険料をどこまでも上げていく事で年金財政を維持しようという話でした。
でも、平成16年改正からは「現役世代が支払う保険料はもう上限を決めて固定しました。その限定された収入の中で年金受給者の年金を支払います」という事になったんですね。
なぜこのように保険料支払う人の保険料率を上限固定したのか。
考えてみてください。高齢者の人が増え続ける中でどこまでも保険料が上がり続けるとしたら、一体どこまで負担は上がるのだろうか…と不安になりますよね。
現代は経済成長もしないし、給料がなかなか上がらない。でも保険料は際限なく上がり続けるなんてキツイですよね。
だから、彼らの負担を際限ないものにしないために、例えば厚生年金保険料の上限(18.3%)を決めて「ここまで負担をお願いします!」というのを目に見える数字で示したんです。
国民年金は16,900円×保険料改定率(平成31年に17,000円×保険料改定率になった)。
——
※ 補足
保険料改定率とは、物価や賃金を反映させたもの。平成16年に16,900円を上限にしますと言っても、当時は16,900円の価値だったかもしれませんが時代が進むにつれて貨幣価値は変動するので、時代に合わせて金額の価値を同じにするため。
——
とはいえ保険料率の上限を固定してしまうと、毎回入ってくる収入が限度あるものとなります。
この有限な収入の中で年金の支払いをやっていこうという事になりました。
これを有限均衡方式といいます。
従来は「将来、支払われる年金給付の水準がほぼ確定」していました。それが変わって、「入ってくる将来の保険料収入がほぼ確定」してしまったのです。
確定した給付から、確定した拠出への転換なのですね。
保険料収入の上限を決めてしまったから、以前のように60%水準を維持する事は出来ないので、保険料収入と年金水準が均衡する50%以上の水準を目指していこうという事になりました。
「すいません、現役世代の負担を際限ないものとしないために、年金受給者の皆さんも協力してください」と。
厚生年金保険料率が18.3%という数字なのも、50%以上の年金水準を支払いたいという点から導き出された保険料率です。
せめて所得代替率50%は給付したいと。
この保険料上限固定で限られた保険料収入の中で、向こう100年間を50%以上の水準で年金財政を均衡させていく事を目標にするという事です。
※ 補足
所得代替率50%とは夫婦の年金が現役男子平均賃金の50%という事。
(メルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』2022年11月23日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)
この記事の著者・hirokiさんのメルマガ
image by: Shutterstock.com