11月18日、作成中の政府案の概要が、与野党6党の幹事長・書記局長会談で示された。
個人から寄付金を集める法人が、借金や、居住中の建物の売却で寄付金を調達するよう要求してはならないとし、寄付しなければ重大な不利益があると不安をあおる行為も禁止、違反した場合は刑事罰を適用するというような内容だ。
一見よさそうに思えるが、これでは、マインドコントロール下で自ら進んで多額の寄付をしたり、自宅売却や借金によらずに高額献金したケースは対象とならない。子や配偶者の取消権もきわめて限定的だ。被害者側弁護士からは、教団の実態を知らないで作成しているのではないかとの声が上がっている。
急いで作成したとはいえ、政府案がザル法のような中身になったのは、茂木幹事長が口出ししているからだと想像するが、どうだろうか。茂木幹事長の調整の眼目は、政府案を公明党の納得を得られる内容に仕向けることだ。それによって、公明党はもちろん、宗教団体の支援を受けている議員の多い党内もまとめられ、今国会で新法を成立させるめどが立つ。茂木幹事長が辣腕をふるって法案をまとめた形に持ち込みたいという算段だろう。
夏の参院選前に、選挙協力をめぐって公明党との間が気まずくなった茂木氏としては、被害者救済法案の規制内容を緩めることで、公明党にいい顔をし、党内右派の歓心を買いたいという思惑があるのではないか。
このところ、茂木氏は次の総理候補として、しばしばメディアに取り上げられている。本人も、岸田首相の相次ぐ失策を見て、しだいにその気になってきているようだ。
もとより茂木氏に、岸田首相の忠臣というイメージはない。岸田政権発足直後、衆議院選挙の小選挙区で敗れた当時の甘利明幹事長が辞任し、党内の混乱を避けるため、安倍晋三氏、麻生太郎氏の了解のもと、急遽、幹事長に起用されたのが党内第二の派閥(平成研)の会長、茂木氏だ。
安倍氏亡きあと、キングメーカーとして茂木氏が最もたよりとするのは麻生氏であろう。
10月23日のBSテレ東「NIKKEI 日曜サロン」に出演した茂木氏は、こう語った。
「岸田さん、麻生さん、そして私。総裁、副総裁、幹事長という立場にあり、またそれぞれ政策グループの長でもあるわけです。古代ローマのですね、政治体制になぞらえて『三頭政治』と言う人もいるようですけれども…」
この自信過剰ぶりには辟易するが、茂木氏の頭の中では、はやくも天下をとったような気になっているのだろうか。
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