有田芳生氏の家に来た信者が「訪問販売」で浴びせた言葉
有田:僕のところにも来たのよ。アパートに住んでいる時にピンポンって来て。開けたら若い女の人一人だったんです。「会社が潰れて今大変で、3枚1000円でハンカチを売って歩いているんです」と言われました。僕はもう統一教会を取材していたので、統一教会が来たなと思いました。そしたら、その女性が「どんなお仕事されているんですか?」と聞くわけ。「出版関係の」って言ったら、その女性が「良いお顔されていますね。芸術関係のお仕事ですか?」みたいなこと言うわけ。うわあ、これは統一教会の「讃美のシャワー」だ。相手を褒めて褒めて褒めあげる手法だと思いましたね。でも僕、買いました。ハンカチ。
多田:優しい。
内田:買ったんですね。
有田:1000円で。
多田:買ってもらわないとノルマを達成できなくて、帰った時に怒られるんです。「なんだー!これはー!」って。必ず出発前に「1万円以上、2万円以上は必ずやります」って言っているから。
内田:それで成績を上げたらお給料貰えるんですか?
多田:貰えません。成績を上げたら、文鮮明教祖とか神様のために自分が精誠(せいせい)を尽くしたっていうことで、いわゆる天国に入るための条件を積んだとでも言うんですかね。そういう感覚です。
有田:珍味の話が今あったけど、珍味っていうと、例えば昆布とかホタテを売って歩くんです。ノルマ達成ができなかったら、夜も飲食街に行く。統一教会の中では、飲食街のことを「B街」と言っていて、これはバーの“B”の意味ですね。酔っぱらいがいるドアを開けて、いきなり若い女性が入ってきて「りんごの歌」を「昆布の歌」に替え歌にして歌ったり、踊り出したりしたら、それは統一教会だよね。
多田:そうです。実績が出ないとB街。私の場合は何かの修練会でやらされたりとか。あと、どこかのB街に行ってお茶なんかも売りましたね。
有田:そこでカラオケ上手くなったんじゃないの(笑)。
多田:いやいやいや(笑)。
内田:私もそうなのかなって今思いました。
多田:カラオケは昔から上手いんじゃないかな(笑)。統一教会によって封印されてたのかもしれないです。統一教会って、カラオケもやっちゃダメなんです。この世の歌なので歌っちゃいけないので、カラオケは基本的には行っちゃいけないんだけど、何回か、霊の親って言って、紹介者の上の人に連れていかれました。
有田:霊の親って言うのは簡単に言うと上司。
内田:上司をそういうふうに呼ぶんですね。
多田:私を伝道して引き入れた人です。上の人が良いって言えば行けるんです。
内田:お許しが出ないとダメ。
多田:そうなんです。許しがあった時に、一緒に1~2回やりました。東京では絶対カラオケはダメなんですけど、私は仙台教会に戻ったんですが、あそこはカラオケしていいんです。びっくり、この地域差。たまたま仙台教会の人たちと一緒に東京に来る機会があったんですが、仙台教会の人はカラオケの話をするんです。そしたら東京にいる人たちは「歌っていいの!?」っていう感じで、すごい顔がこわばっていて。地域差も結構ある。
有田:統一教会に入って10年で辞める方、15年で辞める方がいるとしたら、10年間統一教会に入って辞めた人は、自分が統一教会だった10年間の流行歌は知らないんです。知っちゃいけないって。
内田:世間からすっかり切り離されたみたいな感じなんですね。
有田:例えば、10年で脱会してカラオケに行くと、10年前の歌を歌う。知らないもんね。
内田:浦島太郎みたいなね。
多田:確か僕が歌ったのは、『シクラメンの香り』じゃないですかね。おっしゃる通り間が抜けているので、昔の歌じゃないと歌えないんです。ちょうど私の場合は1987年から96年ぐらいですから、その間の歌はすっぽり抜けているんです。その後から森高千里を一生懸命覚えたっていう記憶がありますけどね。
内田:ただ多田さんの場合は、二世信者とかではないわけですよね。なんでそこまで世の中から切り離されて、色んな制限を受けるまで信じられたのでしょうか。そこが私にとってすごく不思議なんです。
Vol.2 「我が子が統一教会に勧誘されている」危険な兆候とは?「親に相談せぬ子は全員入会」元信者の本音 につづく
有田芳生×多田文明 特別対談アーカイヴ
● 有田芳生×多田文明 Vol.1
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● 有田芳生×多田文明 Vol.4