ポーランドミサイル着弾事件の濡れ衣をロシアに着せようとしたのは誰か?

 

ロシアは戦争プロパガンダの戦いでは、米英にボロ負け、というか不戦敗している。今回のミサイル騒動で、ロシア犯人説は引っ込められたもののウソと確定しておらず、ロシアへの濡れ衣は晴らされていない。4月初めの「ブチャ虐殺事件」も、ロシアに濡れ衣がかけられたままだ。今回ロシアにかけられた戦争犯罪の濡れ衣はいくつもあるが、いずれに対してもロシアがあまり反論せずに話が終わっている。

市民虐殺の濡れ衣をかけられるロシア
濡れ衣をかけられ続けるロシア

2014年7月にウクライナ東部のドネツク上空を飛んでいたマレーシア航空機MH17便が何者かに撃墜された事件について、オランダの裁判所が11月18日に、ウクライナ軍でなくロシア人らの仕業だと結論づける判決を出した。ウクライナ政府は、当日のレーダーの記録を裁判所に出すことも拒否しており証拠を隠匿しているが、オランダの裁判所はウクライナ(と米NATO)に味方してロシア側の犯行と断定した。実際のMH17便は、ウクライナ内戦でウクライナ軍が撃った流れ弾に当たって墜落した可能性が高い。ロシアは判決を非難している。この濡れ衣も晴らされないままだ。

MH17撃墜事件:ひどくなるロシア敵視の濡れ衣
Moscow Slams Dutch Court’s Politically-Motivated Verdict in MH17 Trial
You Can’t Escape The Fourth Turning’s Winter Of Death

ロシアはプロパガンダの戦いで連敗しているが、戦場の戦いではおおむね優勢だ。「名を捨てて実を取る」の観がある。露軍は巧妙な攻撃でウクライナのエネルギーインフラの半分近くを破壊し、ウクライナはこれからの厳冬期、多くの地域で居住不能になり、国民の戦意喪失と難民化が加速する。ウクライナは厳しい戦いを迫られている。今後の厳冬期に居住不能になるのはウクライナだけでなく、ロシアからの石油ガス輸入を急減したドイツなど西欧諸国も同様だ。ドイツでは燃料不足が悪化して停電も予測され、市民生活が困難になり、経済成長が止まって自滅的な退化が進んでいる。ウクライナ戦争は世界大戦の懸念すら高めてしまい、ドイツなど欧州にとって何の利得もない。欧州人は馬鹿だ。

プーチンの偽悪戦略に乗せられた人類
Ukraine – Switching The Lights Off
Ukraine Has Lost 40% Of Energy System As Kyiv Sees First Snow, Freezing Temps

露軍は10月後半、ドニエプル川右岸のケルソン(ヘルソン)から撤収してウクライナ軍に明け渡しており、これが「露軍の惨敗」として米国側で喧伝されている。だが、ロシアはウクライナで長い戦争を予定しており、露軍とウクライナ露系住民の犠牲を最小限にするため、ウクライナ軍が米欧から支援されてしつこく攻撃してくる場合は撤退するようにしている。ウクライナ戦争が長引くほど、ドイツなど欧州の自滅が進み、欧州が対米従属とロシア敵視をやめて親露・非米側に転換する可能性が強まる。欧州の非米化が、ロシアと米多極派が共有するウクライナ戦争の隠れた目標になっている。

Escobar: Sun Tzu Walks Into A Kherson Bar…
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(無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』2022年11月19日号より一部抜粋・敬称略)

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