相撲の行司は「切腹」するために短刀を持っているってホントなの?

TOKYO, JAPAN, APRIL 30TH, 2017. Sumo referee at the Crying Baby Sumo Festival. Japanese believed making infant cry will bring good health. The annual festival is held at Sensoji Temple, Asakusa, Tokyo
 

ところで、行司の最高位である立行司は腰に短刀を差しています。行司差し違いをしたら切腹する為だ、という伝説を聞くことがありますね。興味深い話ですが、これは間違いです。江戸時代までは行司はみな帯刀していました。帯刀していたのは織田信長に由来します。信長は相撲好きで、しばしば相撲興業を催しました。その際、信長の家臣が行司を務め、家臣は武士ですから帯刀しています。その名残として行司は腰に短刀を差すようになった、ということです。

ところが明治時代になり、明治政府が廃刀令を出すと行司たちも帯刀できなくなりました。それでは、行司の威厳が保てないということで、立行司だけ帯刀が許されるようになったのです。

それなのに帯刀しているのは差し違えたら切腹する覚悟を示している、という伝説が生まれたのは大正時代の立行司木村庄之助が結びの一番で行司差し違いを犯し、責任を取って辞職したことが原因でした。

差し違いで辞職したことがいつも間にか、おそらくは帯刀姿から切腹をイメージされるようになったのでしょう。

~中略~

信長が相撲を好んだのは強い力士を家臣に取り立てる、という目的もありました。合戦の際、身辺を守らせたのです。江戸時代の大名が御家の体面、評判を上げる為に力士を召し抱えたのに対し、極めて現実的な目的であったのです。

現代でも力士の後援者、いわゆるタニマチはひとつのステータスです。タニマチにはなれませんが、贔屓力士の奮闘に声援を送りたいですね。

image by: MAHATHIR MOHD YASIN / Shutterstock.com

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