村神様とタイパ。「流行語大賞」と「今年の新語」の顕著な違いとは?

 

第2位が「○○構文」です。代表的なものが「おじさん構文」でしょうか。おじさんが書くSNS上の文章を揶揄した文章表現と言ったところです。絵文字や顔文字が多い、なれなれしい感じの文章を指します。「○○構文」は10年以上前からあったと言います。〈2011年発売のゲーム「エルシャダイ」のせりふをまねて「よし分かった、説明しよう」などと言うパターンが「エルシャダイ構文」と言われました〉(「今年の新語」の特設ページから)。

第3位の「きまず」も独特な使われ方をしています。「まずい」を「まず」と語幹だけで省略する方法は、若い人たちを中心にしたことばによく見られます。「きまず」は「気まずい」の語幹ですが、さほど気まずくない場合にも使うのが特徴です。

メディアの特性も影響する新語

「流行語大賞」と「今年の新語」の一部を見てみました。すると、そこで選ばれたことばが使われるメディアと世代に、違いがあることに気がつきます。「流行語大賞」は、様々なメディアと世代に使われていることばが多く、「今年の新語」は、SNSから発信された若い世代のことばが中心になっています。

「新語」が新聞・ラジオ・テレビのいわゆるオールドメディアからの発信が少なくなってきているという印象を持つのです。「流行語」の方が、オールドメディアにも使われ、オーソライズされたことばになっています。ここに、ことばを発信するパワーバランスが移ってきたように感じるのです。つまり、SNSでの発信が辞書の採録に大きく影響する時代になってきたのだ、と実感したのです。

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未來交創株式会社代表取締役/文筆家 朝日新聞 元校閲センター長・用語幹事 早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了 十数年にわたり、漢字や日本語に関するコラム「漢字んな話」「漢話字典」「ことばのたまゆら」を始め、時代を映すことばエッセイ「あのとき」を朝日新聞に連載。2019年に未來交創を立ち上げ、ビジネスの在り方を文章・ことばから見る新たなコンサルティングを展開。大学のキャリアセミナー、企業・自治体の広報研修に多数出講、テレビ・ラジオ・雑誌などメディアにも登場している。 《著書》 『マジ文章書けないんだけど』(21年4月現在9.4万部、大和書房)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(すばる舎/朝日文庫)、『漢字んな話』(三省堂)など多数。

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