村神様とタイパ。「流行語大賞」と「今年の新語」の顕著な違いとは?

 

「流行語大賞」は他にも「きつねダンス」「国葬儀」「宗教2世」「キーウ」「悪い円安」などが選ばれました。「きつねダンス」はプロ野球・日本ハムの応援ダンスとして話題になったもの。「国葬儀」「宗教2世」は、元総理襲撃とそれを機に浮上した宗教に関して問題になった際のキーワードとなったものです。

「キーウ」は、ロシアのウクライナ侵攻を機に、首都「キエフ」をウクライナの表記・発音に近い形に地名変更されたものです。「悪い円安」は、相次ぐ物価高騰と円安基調が続くなかで選ばれたことばです。これらのことばは、新聞・ラジオ・テレビを始め、ネット・SNSのなかで広く使われました。これらのことばは日常語として認知されたものがほとんどです。

「タイパ」って何だ?

一方、「今年の新語」の第1位は「タイパ」です。寡聞にして僕はこのことばを知りませんでした。「タイのパティーって何だ?」とまったく違うことを考えていたのです。「パ」が「パーティー」の略だとしか思い当たらなかったのです。大昔、「ダンスパーティー」を「ダンパ」と略していた頃の記憶に頼らざるを得なかったのです。

これは「ダイバーシティ」を「ダイバーの集まる町」だと勘違いしているのと、大差ないのです。知っている単語の意味を付けただけなのですから。「タイパ」の解説は「タイムパフォーマンス」の略だとあります。「パ」は「パフォーマンス」の略だったのです。

「今年の新語」の特設ページによると、〈「タイパ」は、何年か前からメディアにも現れていました。たとえば、ビジネス情報誌『ダイヤモンド・チェーンストア』2019年2月15日号は、個人が多忙になり、生産性の向上を求める傾向が強まった結果、「コスパ」よりも「タイパ」重視の時代になったことを指摘しています。〉とあります。

これが、顕著に現れたのが動画の倍速視聴なのだそうです。そういえば、僕が配信しているポッドキャスト「ことばランド」の相手を務めている江川みどりさんも音声メディアなどは「倍速で聴いている」と話していました。

2022年4月に刊行された稲田豊史著『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)は、若い世代で映画やドラマを倍速などで見る人が多いことを論じ、〈倍速視聴・10秒飛ばしする人が追求しているのは、時間コスパだ。これは昨今、若者たちの間で「タイパ」あるいは「タムパ」と呼ばれている〉と記しています(「今年の新語」の特設ページから)。

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