日本の成功から学べ。中国サッカー代表がW杯に出場できない理由

 

では、スポーツと経済の超大国であるアメリカで、どうしてサッカーが「イマイチ」なのでしょうか?答えは簡単で「4大スポーツの牙城を崩せていない」からということに尽きると思います。

人材が集まらない、資金がイマイチ、MLSは成功しているが観客も選手も中南米と欧州に縁のある人ばかりという状況は、基本的には2002年とあまり変わっていません。

実は、4大スポーツの存在感というのは、人材を取られるとか、資金が来ない、視聴率が取れないという数字的なものだけではありません。恐らく、一番深刻なのは、4大スポーツの影響で、「サッカーの面白さが理解されていない」ということだと思います。日本では信じられないかもしれないのですが、アメリカでは次のような声があります。

「90分走り回って1点とか2点というようなショボいスポーツは大嫌い」(バスケファンに多い声ですが、単に混同しているだけです)

「オフサイドが興ざめだ」(これもバスケの影響です。バスケは3秒ルール、8秒ルール、24秒ルールなどがあって、別の規制があるのですが、とにかく混同しているだけです)

「センターキックを後ろに蹴るのがダサい。思い切り前に蹴り込むべきだ」(アイスホッケー好きの偏見でしょうか)

「MFがシュート打つのは、FWを信じないで役割を奪うようでイヤ」(軍隊組織と間違えているのでしょうか。勿論、アメフ文化の悪影響でしょう)

「監督の指示が見えない、90分カオスの中でひたすら全員がランダムに動いているようだ」(これもアメフの悪影響でしょう)

「DFまで上がって総攻撃とか怖すぎる」(だからオフサイドがあるんですってば)

「FWまで戻って守備とかワケワカラン」(アメリカの選手は運動量はバッチリのはず、文句言うな)

昔、子どものサッカーのコーチが、とにかく全員がボールを追いかけるだけのサッカーをさせているので「サッカーでは、スペースを作り、スペースに駆け込むのが基礎でしょ」、みたいなことを言ったら「全く理解されない」ようなことがありましたが、とにかく、4大スポーツの悪影響で、全くサッカーの面白さが理解されていないのです。

アメリカの場合は、ここに最大の問題があるように思います。更に突き詰めていくと、アメリカには個人主義があり、「他人の領分は侵してはならない」とか、「他人とはパーソナルスペースを取るべき」あるいは「主体的に指揮命令に従うのが立派」などという軍国主義的な思想があります。そうした態度が、サッカーに向いていないということもあるでしょう。

とにかく、サッカーの本質がもっと理解されて、その上で巨大な人材の裾野と巨大な経済力を活かして、しっかりサッカーに人とカネが集まるようにしなければ、いくら「USA、USA」と叫んでも、強くならないと思います。

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