世界人口が80億人突破。増えすぎた人類たちが食糧を奪い合う地獄絵図

 

気候変動、深刻化

国連は、報告書で世界人口の急速な増加が、

「地球温暖化や気候変動などさまざまな環境劣化を引き起こしている」

と指摘。

「化石燃料への過度の依存から脱却する必要がある」

と警鐘を鳴らす。

地球温暖化が二酸化炭素の排出量が増加するほどに進行するため、世界のエネルギー消費量が増大するほど、さらにいえば世界人口が増加するほど、悪化する。

地球温暖化の問題が実際に顕在化したのは1970年代以降のことであるが、それは世界のエネルギー消費量が激増した50年以降に、人間の活動による二酸化炭素排出量が森林や海洋などによる吸収量を超過し、大気中に蓄積し続けた結果であると考えられている。

また、世界中で観測されている極端な高温は、高い確信度で人為的活動による地球温暖化が原因と結論づけられている。

報告書は、温暖化の影響により「小さな島国が海面上昇の危機に直面している」と指摘。南太平洋の島国に位置するツバルのナタノ首相は11月に行われた国連気候変動枠組み条約第27回締結国会議(COP27)で、

「温暖化する海が我々の土地をのみ込み始めている」(*4)

と訴えた。海面は今世紀末で最大55センチ上昇するとも(*5)。そのため、平均海抜約2メートルのツバルは、国土消失の危機に直面している。

飢餓懸念 食糧問題、すでに顕在化

報告書では、「人口の増加が見込まれる多くの国が低所得国だ」と指摘。飢餓が増える可能性を訴えた。

とくにアフリカは現在の約13億人から約25億人に倍増すると予想。しかしアフリカでは、すでに気候変動による干ばつとともにロシアのウクライナ侵攻にともなう穀物価格の急騰に直面している。

国連世界食糧計画(WFP)によると、昨年、アフリカ諸国を中心に約8億2,800万人が飢餓状態であったという。

とくに南スーダンは来年、国民の3分の2にあたる780万人に命の危険が迫る「深刻な飢餓状態」に直面するおそれがあるという。

国際社会は、2030年までにあらゆる形態の飢餓、食料不安、栄養不良をなくそうとする目標を立てている。

しかし目標は、ここ数年のコロナ禍により遠のく。国連の報告書によると、世界全体で飢餓の影響を受けている人の数は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生して以降、1億5,000万人増加した。

食料不安は、「ジェンダー」の問題にも関わってくる。2021年に、食料不安の男女格差が拡大。世界全体で、女性の31.9%が中度または重度の食料不安であるのに対し、男性は27.6%。4ポイント以上の差が。

さらに、推定4,500万人の5歳未満児が消耗症(最も命を落とす危険性が高い栄養不良の形態)に陥っており、子どもの死亡リスクを最大12倍まで高めている。

引用・参考文献

(*1)「世界人口が80億人を突破した今、知っておくべき5つの事実」世界経済フォーラム 2022年11月28日

(*2)世界経済フォーラム 2022年11月28日

(*3)「Fertility, mortality, migration, and population scenarios for 195 countries and territories from 2017 to 2100: a forecasting analysis for the Global Burden of Disease Study」The Lancet Journal OCTOBER 17, 2020

(*4)金子靖志「世界人口80億人に」読売新聞 2022年11月15日付朝刊

(*5)金子靖志 2022年11月15日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年12月10日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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