結城浩さんからの回答
ご質問ありがとうございます。
ただ、どうも、あなたの立ち位置がわかりませんでした。一般論としてご質問なさってるのでしょうか。新年の目標なんて、基本的に各人が好きに考えればいいと思うんですが……。
「習慣を目標にすると、毎日単調になるためモチベーションが維持できず継続できない」というのはちょっと変な話です。いちいちモチベーションを気にしなくても淡々と無意識に続けるのが「習慣」じゃないでしょうか。だからこそ、継続したいことを「習慣化」するのはものすごい力となるのです。自分のモチベーションのアップダウンとは無関係にいつのまにか積み上がるからです。
私の話をすると、最近は「新年の目標」はあまり立てません。昔はよく新年の目標を立てて、すぐに忘れました。でも普段忘れている目標は意味がありません。なので(いまの私には)あまり意味はないと思っています。
その代わりというわけではありませんが、毎年、毎月、毎週、毎日のそれぞれの単位での成果物を確かめることは続けています。作った成果物の実績と、作る成果物の予想を立てます。それであとは静かに毎日を繰り返します。
私は可能な限り、自分の日々の行動を「習慣化」するように心がけています。《習慣の力》は強大です。だから、良い習慣を身につけ、悪い習慣を減らすように心がけているのです。
「時間があっという間に経つ」ことを経験する人は多いですね。よい習慣をたくさん持っていると、時間の過ぎる「速さ」が自分の「強さ」に変わります。よい習慣の結果がすぐに積み上がるからです。習慣化するというのは《速く過ぎていく時間を味方につける》ともいえます。
モチベーションは揺れ動きます。私は、自分のモチベーションに頼らないで日々の活動を続けられるような仕組み作りを心がけています。少なくとも、モチベーションがゼロでも「着手」できるようにしたいと思っています。
モチベーションが悪いわけではありません。モチベーションの不安定さが悪いのです。どんな活動も、地味な部分があり、成果が見えない時期があります。体調を崩す場合もありますし、気にかかる問題が発生して進捗が停滞することもあります。それでも淡々と続ける力はモチベーションよりも強いものです(もちろん休むことも大事ですけれど)。
モチベーションが高いときにも頑張りすぎない。低いときにも腐らない。淡々と進みます。モチベーションが高くてどんどんやりたいときには、モチベーションが下がっても継続できる仕組み作りに力を注ぎます。
目標や計画を立てるときは一般に、状況がまだよくわからず、でもモチベーションが高い状態です。なので、無謀な計画を立てがちです。まあ、それもまた悪いわけではないのですけれど(現実に応じて計画を修正できるなら、という前提があれば)。
結城は毎週のメルマガをほとんど休まずに10年間継続していますし、ときどきオフシーズンをはさみつつ毎週のWeb連載『数学ガールの秘密ノート』を8年間継続しています。これはもちろん読者さんの応援あってこそですけれど、自分の状態に依存せず「習慣化」していることも継続に寄与しているでしょう。
というところで、あなたのご質問への回答とさせてください。一言でいえば「モチベーションに頼らずに着手・実行できるように習慣化された活動は強い」となるでしょう。《習慣の力》にあなたも注目してみてくださいね。
◆ ルーチンワークを創造して、一冊の本を書き上げる(安定して成果物を作る話)
◆ 20代エンジニア、高校であきらめた数学を勉強し直したい(継続するための体制を整える話)
◆ 「小さな目標」の「大きな意味」(目標の話)
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